2011年寄稿の「恋ではなく ―― It's not love, but so where near.」論 全文公開しました
「色恋ばかりが、人生じゃない」 - 『恋ではなく―― It's not love, but so where near.』論
2011年発行の恋愛ゲーム総合論集に寄稿した、「恋ではなく ―― It's not love, but so where near.」論を、完売と今後の再版の予定が無いとのことで一般公開しました。
俺がずっとファンとしてゲーム・小説を追いかけている早狩武志の、ある種の集大成であるゲーム「恋ではなく」について思うところをまとめています。
以前に公開している早狩武志論(早狩武志論 「うまくいくばかりが、恋じゃない」)と併せて読むのを推奨です。
君は「彼女の物語」を目撃する──「Her Story」 感想
In 1994 a British woman is interviewed seven times
about her missing husband. This is her story.
(1994年、あるイギリス人の女性が行方不明の彼女の夫について7回の事情聴取を受けた。これは彼女の物語である)
A Video Game About a Woman Talking to the Police - HER STORY
「答えが全て既に揃っている」推理ゲーム
ゲームを起動すると現れるのは古めかしいデスクトップを模した画面。
プレイヤーのすることはこの画面からデータベースにキーワードを入力し、ヒットした事情聴取の記録動画を再生していくことだけ。
デフォルトで検索キーワードにされている「MURDER(殺人)」で検索すると4件動画がヒットします。ひとつを選んで再生すると事情聴取の動画が流れ、事情聴取されている「彼女」の言葉は書き起こしされて動画の下部に表示されます。
事情聴取の記録動画は長くてもせいぜい2分弱、短いとたった数秒のみの一言で終わるものすらあり。ただでさえ断片的な上に、それぞれ話題の焦点の異なる7回の事情聴取の記録が入り交じっているので漫然と見ていてもまったく文脈がつかめません。
またキーワードによっては非常に多数の動画がヒットすることもありますが、コンピューターが古くデータベースが断片化しているので何件ヒットしようが頭から5件しか表示されません。
何が起きたのか、彼女はどうして事情聴取されているのか。
キーワード検索を繰り返し、断片的な証言を再生していくなかでプレイヤーはそれを理解していきます。
この各々のプレイヤーごとに異なる理解していく過程、どんなキーワードを選ぶかの試行錯誤 この体験それ自体が本作の面白い部分そのものなのです。
自分がプレイしていて、開始から3時間ほどで核心に迫る証言にたどり着いて断片的な動画たちに一本通った文脈を見いだせた瞬間の衝撃といったらもう。喜びと驚きのあまり軽く叫び声を上げてしまったくらいでした。
そこに至るまでの検索キーワードの推測は全て自分の「推理」によるものだったわけで。
そうやって証言の文脈がどんどん理解できるようになっていくあの感覚は相当な気持ちよさがありました。
例えば事情聴取のはじめに飲み物を勧められて「コーヒーを1杯」と話すだけで終わる証言動画。
こんなものですら、真相にある程度近づいた後だと非常に重要な意味を持ってきたりします。
具体的にこんな証言動画があると紹介することは、その動画から得られる検索キーワードを紹介することになり、すなわちそれは本作のネタバレであるので具体的なことを何も言えないのがもどかしいことこの上ないです。
本作を紹介する記事で「推理ゲーム」という言葉が使われているのにプレイを開始した当初は違和感を覚えていました。
答え=「彼女」の証言は既に全て得られており、プレイヤーはキーワード検索でデータベースからそれを引き出しているだけなのではと。
だがその思いはプレイするうちに塗り変わっていき、いまでは俺も本作を「推理ゲーム」だと胸を張って言えます。
キーワード検索→証言→証言から得たキーワードで検索→ …… と繰り返す過程は、擬似的に「彼女」に質問して会話して事情聴取をしていく過程を追体験しているのに他ならないのです。
そして、真相に迫れば迫るほど、事情聴取で話される内容そのものに心を打たれていく事になります。
まさにこれは「Her Story=彼女の物語」。”Story”には「身の上話」という意味もあると知って膝を打ちましたね。(storyの意味 - 英和辞典 Weblio辞書)
証言動画が全て英語、キーワード検索も英語で行わなければならないのが大きな壁であるとは思いつつも、なかなか味わえない「推理体験」ができるゲームなので俺は全力でお勧めしたいです。とりあえず使われている単語はかなり平易だし、証言を聞き取れなくとも動画の下部に書き起こしが表示されるので辞書片手にプレイすればなんとかなる……はず。
プレイ当時の感想
Steamで買った「HER STORY」プレイ開始した PS版 Serial Experiments lainみたいなもんかこれ URL
ウィスキーを飲んで言語能力が落ちているところでの完全英語のHER STORYプレイはつらいな
あ、これ一人だけのインタビューじゃないのか? >HER STORY
同じ人が髪型と服装変えてるのかと思ってたけどあれ……?
「HER STORY」こんな感じで架空のデスクトップ上のデーターベースに検索キーワード(英語)を入力してヒットする事情聴取(?)動画(英語)を見ていくゲーム PS版Serial Experiments lainを思い出すな URL
PS版Serial Experiments lainと違ってBGVが複数あって気が滅入らないのは本当に良い lainはあのオルゴール曲1曲しかないのはプレイしてて発狂しそうになった
あーこれ動画の日付も注意して見ないといけないやつだ 今ごろ気づいた
ああ…… なるほど……
歌詞訳すのつらい
「HER STORY」 これ”断片的な事情聴取動画のテキスト起こし中に含まれる単語をデータベースで検索してヒットしたものを再生していく” というシステム上、プレイ中の画面をアップするのがそのままネタバレだ(何の単語を使えばいいか判ってしまうので)
ああ…… そういうこと……
実況できねえよこれw
とりあえず真相っぽいものの半分くらいはつかめた
「HER STORY」 70%くらいまで行ったと思うがそろそろ検索キーワードが思いつかなくて限界を感じてきた 100%どうやったらできるんだこれ 根気しかないのか
「HER STORY」舞台演劇のノウハウが導入されているという指摘を目にし、確かにこれは一人芝居でできそうな話だと思った
「Her Story」 いまんとこ最も印象深かった動画は94/7/3 11:42:02開始のやつ 真相究明にはほぼなんの役にも立たないんだが、「”彼女”の物語」を象徴している気がしてな、あれ
アニメ「艦隊これくしょん」感想、あるいは我々が艦これに見出している「物語」について
TVアニメシリーズ第二期・劇場版アニメも発表になったところで、ずっと書いていなかった1月から放映していたアニメ「艦隊これくしょん」の感想をようやく書いてみました。
Blog記事にしていないだけでTwitterではそれなりに長文を書いていたので、それら断片をまとめています。
そして艦これアニメについての感想を書くことはい、結果的に動画を一方的にインプットするだけのアニメ作品と、プレイヤーが能動的に行動した結果としてのプレイ体験が返ってくるゲームとのメディアの違いについてに繋がるのでそちらについても触れてみました。
アニメの「空虚」さ
事前の期待値が極限まで下がってアサルトガールズ級になってた×観ながらキメた焼酎ロック1杯日本酒2杯のアルコールで判断力と感受性が極度に低下していたので「えっ普通に話なってるじゃん」みたいな感想が
プレイ体験からそれぞれのプレイヤーの中に生まれるそれぞれの「物語」抜きに、ゲーム内で静的に提示されてるものだけで構成するとこんなに空虚だったんだな、というのをあらためて思い知らされるな>艦これアニメ1話観た
あと原作台詞引用に関しては「言わせておけばファンは喜ぶんだろう」でなく、ゲームをプレイしてると体験を通してほんの1,2種類の戦闘ボイス入渠ボイスでキャラが立ってしまう → 結果だけ見て、その台詞を言わせればキャラが立つだろう という制作側の誤解を感じる>艦これアニメ1話観た
榛名に戦闘突入の際に「勝手は榛名が許しません!」 ””以外の”” 台詞を言わせようとすると、”榛名はこんなこと言いそう”というキャラクター解釈が必要なんだけど、ゲーム内で静的に示されてるものだけだと薄すぎて考えるの難しいよな、とか>艦これアニメ1話観た
限られたグラフィックを補完する我々の「体験」と、そこから生まれる「物語」
あんまり深く考えたことが無かったけれど、艦これってゲーム内だと1キャラにつきグラフィック4枚(通常、中破×ノーマル、改)しかなくて、いくらプレイしても新しいカードの絵柄が手に入ったりしないんだよな※改二とかその辺は考慮せず
俺たちプレイヤーが見ている艦娘の多彩な姿というのは、ゲーム内の4枚だけの絵を元にして各プレイヤー個別の一回性のプレイ体験から脳内に描かれたものと、それらが二次創作として表現され他のプレイヤーにも共有されるようになったもので、ゲーム内のデータに源は無いんだよな
2015-01-11 00:45:25 via TweetDeck to @a_park
@maria_sayaka @GammaRay_HM でも自分たちプレイヤーの中にはグラフィックが通常・中破の2枚しか無くても問題なくプレイ体験としていろいろな艦娘の姿を脳裏に描けるじゃないですか 艦これの「物語」の肝がこの辺りにある気がして
2015-01-11 00:48:28 via TweetDeck to @maria_sayaka
@maria_sayaka @GammaRay_HM 「二次創作がしやすい」どころか、もしかすると自分たちが艦これの「物語」だと思っているものって全て自分または他人がそれぞれののプレイ体験を通して脳裏に得た二次創作で、公式は全くの空虚なのではとすら最近は思っています
2015-01-11 00:52:05 via TweetDeck to @maria_sayaka
二次創作設定の取り入れについて
「広く受け入れられる二次創作設定」と「一部にしか受け入れられない二次創作設定」が有るだけで、俺たちが「艦隊これくしょん」に視ている物語・キャラクター描写ってほぼ全てそれぞれのプレイヤーがそれぞれのプレイ体験から想起し、共有した二次創作設定なのでは……とすら思えてきた
おまけ:公式コミカライズの空虚さ
「艦隊これくしょん いつか静かな海で」を2巻まで読んで、あまりの空虚さに打ちのめされていた ディティールを描き込めば描き込むほど、なんで戦ってるの? 何と戦っているの? という中心の空虚さがあらわになるというか…… プレイしているとそこを「各自の物語」が埋めてくれるんだけど
これは凄く死後の世界っぽい作品だと思うのです。とても抽象的で輪郭の掴めない世界の中で、その身におった役割や果たせなかった想いを繰り返し再生し続けるような。
艦隊これくしょん−艦これ− いつか静かな海で 2 / 田中謙介・C2機関・さいとー栄 - FULL MOON PRAYER
この公式コミカライズ「いつか静かな海で」の感想記事が図らずも俺がアニメから感じた空虚さを巧く表現していたので引用。本当に、恐ろしいくらいに空虚なんですよ、艦これは。
アニメ終盤を見て
積んでいた艦これアニメ終盤4話を観た 俺の感想としては”””絵に説得力が足りねえ”””の一言に尽きる なんなのそのレイアウト、なんなのその演出!? みたいな引っかかりを覚えて没入させてくれなくてつらかった
脚本がどうの、キャラクター描写がどうの、二次創作の取り入れがどうの……ってのは原因じゃ無くて結果で、まず動画作品なんだから「良い画」を見せてくれよに尽きるな、と思った
関連リンク
- [CEDEC 2013]海外で盛り上がる「ナラティブ」とは何だ? 明確に定義されてこなかった“ナラティブなゲーム”の正体を探るセッションをレポート - 4Gamer.net http://www.4gamer.net/games/999/G999905/20130827028/
- [CEDEC 2014]冲方 丁氏の基調講演「物語の力」。物語の正体と,これまでの歴史,そしてこれから - 4Gamer.net
- あの鈴木銀一郎氏がついに提督デビュー。本当に今からでも遅くない,80歳ぐらいからの「艦これ」のススメ - 4Gamer.net
艦これのプレイ体験とそこから生まれている物語について参考になりそうな記事を挙げてみました。
俺が艦これおじさんと化して1年が過ぎた
艦これってる
— a-park (えーぱーく) (@a_park) 2013, 6月 17
(記念すべきプレイ開始第一声)
「艦隊これくしょん~艦これ~」 DMMオンラインゲーム公式ページ
2013/6/17のプレイ開始からあっという間に1年が経ってしまいました。1年間ほぼ毎日プレイしていた俺の現状はこんな感じ。
司令部Lv.101 所持レア艦娘は大鳳・大和型・三隈(×3)・鈴谷・熊野・あきつ丸(×2)・阿賀野型・Z1/Z3・浦風・瑞鳳 あたりは一通り持ってます。これだけ長くプレイしてればやっていればそりゃあね。
というか、いつのまにか通常/大型建造で建造可能な艦娘のうち瑞鶴とビスマルク以外は全部持ってました。
そしてゲームの外では、高雄型と妙高型の区別が付いていなかったり真珠湾攻撃に参加した空母六隻の名前と詳細が一致しなかったりと曖昧だった俺の帝国海軍艦船知識が艦これによって大幅に向上しました。特に駆逐艦については艦これを通じて知ったものが圧倒的に多いです。
さらに、この1年で同人誌即売会に艦これ関連で9回参加(うち8回はサークル参加)という単一の作品に冠しての最多参加記録を打ち立ててしまいました。その間に自サークルで3冊、合同誌で2冊寄稿し、そのうち「戦争は艦娘の顔をしていない」はとらのあなのランキング上位に載るような大ヒットになったりしました。
2次創作を読むほうでも、休眠させてまったく活用していなかったpixivのアカウントを艦これにであってから精力的に使うようになりました。おかげで俺のpixivブックマークは9割方が艦これ2次創作で占められています。正直、キャラクターにここまで入れ込むのはかなり久しぶりで前がいつだったか俄には思い出せないくらいです。
こうして書き出してみると、艦これのおかげで生活が完全に変わってますね…… すごい……
しかし1年前の今ごろ(6/27)というと、あまりに急激にプレイヤーが増加したおかげでプレイヤー登録を一時停止していた時期だった覚えがあります。それととんでもない頻度でサーバーが落ちていて、30分くらいしか連続でプレイできないとかざらでしたのでいまとはプレイ環境が違いすぎて驚いてしまいます。
あの頃は全くなんの操作もせず母港画面で放置しているだけで突然強制終了したりで異常としか思えない状況でした。そんな酷すぎるゲームをみんな喜んでプレイしていたのは、それだけ熱中させるものがあったから。
強制終了が皆無になりゲームシステムに様々な部分で改変・追加がなされた現在の艦これは、あの頃と比べるとほとんど違うゲームとすら言って良いかもしれません。
むしろ、非常に安定している上に序盤ステージでもやれることの増えた現在のほうが新規にプレイを始めるには良いとすら思えます。流行になんとなく乗れないでいた貴方もさあこっちへおいで。
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アップデート履歴から予想する艦これ次回イベントの展開 ~”次はミッドウェー”は真実か?~
2/14のケッコンカッコカリ実装に引き続き、2/26の新海域(5-4)開放、そしてとさらなる新海域と海外艦実装に1周年記念イベントの予告と新展開が盛りだくさんの艦隊これくしょん周辺です。
ここで気になるのは、次回のイベント限定海域がどうなるのか。
2013年11月イベントの夜戦マップで苦しめられた皆さんは多いでしょう。それ以降にプレイを開始した方でも、どれだけのものだったか噂には聞いているかと思います。
夏イベント後の重巡の夜戦能力強化と4-4は、2013年11月イベントの予告だったといまなら振り返ることが出来ます。
どうも「新要素・新海域の実装はその後のイベントの『予習』なのではないか」と俺は思っていまして。
資源を備蓄するだけでは十分でなく、適切な装備開発と要求される艦種の強化をおこなってこそ万全の準備というもの。
2013/4/23のサービス開始から2014年3月頭これまでの全てのアップデート履歴をまとめてみました。
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