偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

2006年総括(作品編)

上のblog編で記事自体に言及した後は、ここで感想を書いた作品達の中からベストを決めてみましょう。
基本的に2006年に読んだ/プレイした/観たものが対象であり、元もとの発売日などは考慮に入れていませんのでご了承ください。

<本>

フィクション

得てしてこういう年間振り返り企画は年末のものの評価が高くなりがちですが、それらを押さえて年始に読んだ本作がランクイン。つまりはそれほどのものだということです。
美術品とそれにまつわる人々のエピソードをまとめた短編集(ちょっとSF風味)と見せかけておいて、気が付けば人間が「美」を鑑賞し評価するとはどういう事なのかという深遠なテーマを語っている不思議な作品。
各々が無関係に思えた前半の美術品ごとのエピソード群が、全てラストで上のテーマのために収束していく様はまさに絶妙の一言でした。
SF的舞台設定やガジェットもこれらを語るのを妨げることなく、かといって無関係に独立して存在することもなく実に自然にストーリーの一部として組み込まれているのもまた見事。

ノンフィクション
  • 選なし

今年はそれほど数を読んでおらず、これといった当たりが無かったのでノンフィクションの部は選なし。
「文明崩壊」「目の誕生」あたりはそれなりに面白かったもののここで取り上げるほどではありませんでした。

コミック

「物欲から観た戦国時代」という新しい観点を拓いた名作。
武人としての立場と趣味人としての立場の間を揺れ動き続ける主人公の良い意味での俗物ぶりが面白いです。
「物欲」の面ばかり強調されがちながらも本能寺の変を新解釈していたりと「歴史もの」としても十分に読めるのも特徴。
主人公の顔芸と多種多様すぎるオノマトペは必見です。

<ゲーム>

まさにノベルゲームだから、このシステムだからこそ実現できた物語。
プレーヤーが謎を説くために何周もループを繰り返し頭を悩ませることが既にストーリーの一部を構成しているというのが凄すぎ。
特殊なシステムを採用したノベルゲームは数あれど、システムとストーリーがここまで融合している作品は早々無いでしょう。
「ループもの」の極北とでも言うべき作品でした。



改めて振り返ると少々ラノベとコミックに傾倒しすぎて他のジャンルがおろそかになっている感が。
そして全体的に新規開拓をせずに既存シリーズの続編や巷で評判の良いものばかりを取り上げているので、2007年はもう少し開拓者精神をもって新しい作品の発見に努めるとしましょう。
…地雷を踏んでも泣かないよ。泣かないったら。