偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

学園カゲキ!

学園カゲキ! (ガガガ文庫 や 1-1)

学園カゲキ! (ガガガ文庫 や 1-1)

いいか野郎ども! 目立て! ここでは目立ったもの勝ちだ!!

学食風景は全国生中継、喧嘩を止めに入ればドラマの撮影、担任を監督に生徒を出演者にしてクラス単位でTV番組製作して視聴率競争。
タレント・俳優志望の生徒が集い、学校生活そのものをコンテンツとする「歌劇学園」に、なんとなく入学してしまった成り上がり精神ゼロの主人公が「出演」する番組とは──



特殊な状況下での王道ボーイミーツガールなお話と思わせておいて、生徒の生活全てが娯楽コンテンツとなるという舞台設定を上手く生かしたどんでん返しと予定調和的ながらも王道な結末はそこそこ読ませてくれます。
どんでん返しの部分の伏線はあからさま過ぎるため、かなり早くから真相に気付いてしまいそういう意味では肩透かしを食らいました。
が、歌劇学園の特殊すぎる環境と類型から半歩ずれたキャラ造形がコメディとしては中々秀逸で途中で飽きは来ず。
「アドリブタイム」とかホント最高だと思う。


と、久しぶりに普通のラブコメ読んでお腹一杯だよと思いながら満足してエピローグを読んでいたら、妙な描写があって首をひねる俺。


……実はこれ、読者自体が「歌劇学園を舞台にした『学園カゲキ!』というドラマを見ている一視聴者」という壮大にメタな話なんじゃないか?


改めて読み返すと作中の「主人公とヒロインが演じるTVドラマ」のシーンの文体と、本編の文体が全く変わらない事を考え合わせれば、どんでん返しで明かされる部分のさらにその上にもう一層「嘘」「演技」が混じってるんじゃないかと思えてなりません。
あんな意味深な描写を入れず普通にハッピーエンドにしておけばいいところでアレだもんな。


や、俺がメタフィクションな話を好き過ぎるからこんな穿った見方をしてしまうのであって、素直にちょっとひねりの効いた青春ラブコメとして楽しんでもらって全然OKというかむしろそれ推奨ですけど。