メイド諸君!(1)〜(3)
- 作者: きづきあきら,サトウナンキ
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忠実で 清楚で 身の回りの世話を焼いてくれて
自分を決して侮らず 慰め 癒す ただひたすらに尽くす存在
メイド服はその象徴
優しいママのような 恋人のような でも気を使わなくていい
怖くない女の子という商品
だいぶ前に購入し、適当に拾い読み→痛そうなので止めるというサイクルを繰り返して2週間近く、そろそろ本腰を入れて向き合おうかということで一気読み。
……いや、初めて読んだきづきあきら作品が「ヨイコノミライ」だったもので、またああいう強烈に心が痛くなるお話なのだろうと思うと色々と忙しい時には読み始める気がしなくてね。
で、読んでみればというと1巻まではいわば理想化された接客業としてのメイドカフェ、「お客様に楽しんでもらうために一時の非日常を提供するのが私達メイドの幸せ」的なお話でさしたる新味はありませんでした。
おっとりして誰にでも優しいがそれゆえにメイドカフェの「サービスとしての優しさ」に戸惑う主人公、客に対しては計算されたドジっ娘を演じるしたたかさを持ちながらもどこか憎めない同僚メイド、常にプロフェッショナルとしての姿勢を崩さない先輩メイド、そして自らの理想の店を追い求めるチーフメイド。
そんな彼女達の人間模様と、時折お店で起こる小事件を挟みつつ主人公の成長を描く物語………だと思っていたんですよ。ええ最初は。
しかし2巻からはお店の話というよりは常連客との恋愛やメイド達の過去のトラウマ・コンプレックス等にスポットが当たり始め、気が付けばそこはきづきあきら+サトウナンキ時空。
「なんで処女じゃないんですか!?」とかもうね。読んでいてあまりにも心が痛すぎ悶え苦しむ俺がそこに。
相変わらずの黒さでした。
3巻まで読み進めた今となっては序盤の理想を説くような言葉も素直には受け取れません。
「非日常を提供する」ということは欲望/妄想の対象を自ら演じるというわけで。
特に先輩メイドのあるみ(2巻の表紙の人)に関しては1話で登場した時点から何か危ないものを感じていたら、判明した内面はその予想以上にアレな人で驚き。
よく言えばメイドとしてのプロフェッショナル意識の塊とでもいうべきその行動は、逆に言うと「メイドである」という外部の規範がないとまともに動けない極端に他律的な人間だということの裏返しなわけで。
「外側は気が強そうで身持ちが固いけど、中身は主体性の無い気の弱い女」
「『嫁』にぴったりってわけか……」
「そう 『セックスつきの家政婦』 現実にはあまりやってくれる女はいない」
という2巻でのあるみに対するあまりにも身も蓋も無い人物評価のくだりでは違う意味で鳥肌が立ちましたよ。
他の人たちも大なり小なりこういった歪みを抱えており、それが表面化してくる2巻以降は心がホント痛いです。
主人公ちょこと常連客鳥取の恋愛模様も、表面的には女性に不慣れな非モテヲタ男とそれを無限の包容力で癒すメイドという枠組みなのですが、ちょこの女神のごとき「優しさ」の裏に何があるのかを考えるともうね。
いや、別に優しさは見せ掛けで裏では騙そうとしてるとかそういう方向ではなく。
主人公に関してのみ唯一内面(すなわち「メイド」となる前の過去)について詳細な描写がないだけに、他のメイド達同様、もしくはそれ以上に強烈なものを抱えているだろうと思えてなりませんよ。
「メイドの『ちょこ』を好きなだけであって、『千代子』(本名)で受け入れてもらえると思ったのが間違ってたんですね」
なんて主人公の台詞にあるように、欲望の対象としての女の子の象徴としての「メイドさん」に真正面から挑んでいるという意味ではある意味凄い作品だと思います。
……表紙や帯の宣伝文句から受けるイメージで買うとかなり後悔しそうですけど。
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