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偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

そばかすのフィギュア

そばかすのフィギュア (ハヤカワ文庫 JA ス 1-4)

そばかすのフィギュア (ハヤカワ文庫 JA ス 1-4)

時間遡行・試験管ベイビー・知性を持つ人間型ロボット・クローン人間等々のSF的道具仕立てや世界設定を用いながらもそういった部分のみを描く事に終始せず、そこ生きる人々の感情を瑞々しく描いた逸品短編集。
デビュー作を含む初期短編集という事で多少の稚拙さはあっても、「永遠の森」や「五人姉妹」で見せてくれる才能の片鱗は既にうかがえます。


「あなたの恋が叶いますように」との帯の言葉通り、女性を主人公とする恋愛感情絡みの話がその殆どを占めるとはいえ、それぞれに違ったSF的アプローチ・主人公の立ち位置や人物造形で飽きさせることはありません。
自らのクローン体との対話を扱う「セピアの迷彩」は後の「五人姉妹」、日本舞踊とSFの融合の「お夏 清十郎」は後の「賤の小田巻」「夏衣の雪」辺りにモチーフが継承されているのが判って面白かったり。


他にも以後の作品で見られる要素が色々と含まれており、解説で「菅浩江入門に相応しい」なんて書かれているのもさもありなんというところでした。


<関連エントリ>

SF版ギャラリーフェイクとでも言うべき、美術品とそれを巡る人々の人間模様(と、少々の人情物語)だと思って読んでいたら「人間が『美』を鑑賞する事とは」という実に深遠なテーマを語っていたという凄い作品。
リンク先でも書いていますが、ここの短編で扱ったテーマ全てが一つの元に収束していく最終話が本当に見事でした。