「エロゲーで恋愛修行」の限界 - 「こいとれ」感想
- 出版社/メーカー: 銀時計
- 発売日: 2007/06/29
- メディア: DVD-ROM
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『恋愛部』に強引に勧誘された主人公・沢崎 遊。
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恋愛部の活動内容は『ラブロワ』と呼ばれる、ある一定のルールに基づいた恋愛をすること。
遊、そして恋愛部員達は「本当の恋」を見つける事ができるのか…?
「恋愛力を鍛えるトレーニングADV」を自称するこのゲームが一体どんな内容なのか気になってプレイし始めてからおよそ2ヶ月、ようやく(ほぼ)全て終わったので感想を。
なんというか、一言で言うととても『良く出来て』いるんだけど、そもそもの企画の方向性が間違っているため非常に評価しづらい作品になってしまった感じ。
一般的なマルチエンディング型エロゲ/ギャルゲーのストーリーは、時系列を横軸にとり、物語の流れを矢印で現すと以下のようなものです。
例外もあるとはいえ、「分岐」というい表現も示すとおりこういった樹形図のような形になる物が大半でしょう。
しかし「こいとれ」はこの分岐スタイルが少々異色。
模式図で現すとこのようになります。基本的にストーリーは一本道で、特定の分岐タイミングまでに好感度を一定値以上に上げた場合にのみ各キャラエンドへの選択肢が現れると言うスタイル。
そこで個別ルートに入らない方を選択すればそのまま話が続きます。
一番最初に個別ルート分岐があるハート先輩なんて、ゲーム開始から2ヶ月(6月)で終わりますからね。最長のカナ&恋子が卒業(次年度3月)までかかるのとはえらい違いです。
そして「恋愛偏差値」の判定が、各選択肢に「当り」「外れ」が用意されていて選択毎にポイントが増減するシステムであるため基本的に長期間プレイすればするだけ「偏差値」が上がります。つまりそれは序盤に分岐があるヒロインは必然的に終了時の判定で低い「偏差値」になりがちであり、分岐タイミングが後になればなるほどエンディング後の判定で高い値が出ると言う事。
このシステムが結果的に「落としやすい(=偏差値低くても大丈夫な)ヒロイン」と「落とし難い(=偏差値高くないと駄目な)ヒロイン」という格差をつくりだしてしまっています。
そして、この格差がストーリー的・キャラクター設定的に間違っていないのがまた。
最も早い段階で個別ルートに進めるハート先輩ルートなんて、手近なところで優しいだけのダメな人同士が引っ掛かってしまった感が物凄いからなぁ。
ちなみに各ヒロインの個別エンドのほかに「高偏差値エンド」が存在するのですが、そこへの進み方が全員と個別ルート分岐フラグを立てておいてあえてそちらに進まない(結果として誰ともくっつかないで終わる)というのだったのには素で噴きました。
「結局のところ経験を積むのが一番」というこのゲームの恋愛に対する薀蓄の要点を体現しているといえばそうなんですが、それは人として(エロゲーとして)どうなんだと思うよ。
さらに逆の「低偏差値ルート」、すなわち全ての選択肢で評価の低いものを選び続けた結果進めるルートも存在し、いまこれを書きながらプレイしているのですが何か選択肢を選ぶたびに「何このデリカシーの無い馬鹿・・・?」みたいな容赦無い反応をされるのが非常に辛いです。俺たち非モテにとっては「低偏差値ルート」こそがリアル!!
と、ここまでシステムの話ばかりしてしまいましたけど、テキスト・ストーリー・キャラの魅力といった点では結構良く出来ているのもまた確か。そうでなければ2ヶ月近くかけてフルコンプしようと思いませんよね。
特に後半で分岐する人達(うたは、カナ、恋子)あたりは普通に面白かったので、こういう特殊なシステム無しの普通の学園萌えゲーをこのライターさんが書いていたら是非見てみたいです。
企画コンセプトを完全に実現しているという意味では大したものなのですけれど、その企画自体の方向性が明後日の方向を向いていたとでも言えばよいのでしょうか。
やはり一般的なマルチエンディング型エロゲーのスタイルで「ゲームで恋愛修行」を目指したのは無茶だと思うのですよ。その種の事を目指すならそれ様に最適化されたシステム・シナリオを用意するべきなのでしょうね。
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こいとれ - 偏読日記@はてな
プレイ開始直後の感想記事。後半に行くにつれだいぶ薄まりますが、序盤(特にプロローグが終わるまで)の「こいとれ」の薀蓄ゲーっぷりは本当に素晴らしいものがあります。
恋子先輩の恋愛薀蓄・うたは姉さんの家事薀蓄・ハート先輩の偉人の名言薀蓄の3重攻撃に晒され続けて本気でシナリオライターに対して切れそうになったのもいい思い出です。末期なんてこれら薀蓄キャラ(特に恋子)が画面に登場するだけで怒りが湧いたからなぁ。
最後に恒例のデモムービー貼り。