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偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

ガンパレード・マーチ 山口防衛戦(4)&九州奪還(1)

感想

ガンパレード・マーチ 山口防衛戦〈4〉 (電撃文庫)

ガンパレード・マーチ 山口防衛戦〈4〉 (電撃文庫)


ガンパレード・マーチ 九州奪還〈1〉 (電撃文庫)

ガンパレード・マーチ 九州奪還〈1〉 (電撃文庫)


俺の見たかった「ガンパレード・マーチ」スピンオフ作品が、今まさに此処にある!!


運用するのは制式採用から外れた人型駆逐戦車、隊を構成するのは「プロの軍人」から外れた学徒動員兵の、更にその中でのはみ出し者達。「ガンパレード・マーチ」と言う作品は、絶望的な戦況の中でのそんな彼らの足掻きと、彼らが「はみ出し者」であるがこそに戦争の行く末を変える物語でした。


しかし逆に、あの世界で戦う一般の兵士達にスポットが当たる事がほぼ無いのが俺が不満に思うところでもあり。ゲームの中で九州防衛戦に動員された「学兵」*1は十万人と言う記述がありますが、各種の公式スピンオフから二次創作まで彼らに光を当てた作品はほとんどありませんでした。
まして同時に存在する「大人の軍人」達については何をいわんやというところ。


が、この榊涼介版「ガンパレード・マーチ」は、同じ世界観を用いながらもこれまでのスピンオフ作品とは一線を画しています。ゲーム版の主人公達と同等、もしくはそれ以上に小説版オリジナルの「普通の人達」に光が当たっているのです。
此処まで来るとある種の架空戦記、言い方を変えれば戦場という極限状況を舞台にした群像劇と言う意味で物凄い高みに達してしまっています。今までにも何度か書いていますが、最早これはゲームのノベライズなどという枠に収まるものではありません。「ガンパレード・マーチ」という世界観を使った立派な一つの作品だ。


そういう意味で、「九州奪還(1)」での下関から門司への上陸シーンでの、護衛艦隊から揚陸艦の船長に先触れとなる特殊部隊そして対岸から支援射撃を行う砲兵達、果ては上陸後に補給のために鉄道を整備する技術者達まで、ありとあらゆる者達が「九州奪還」という一つの目的に向けて突き進む下りは実に素晴らしいです。更にそうやって一致団結させた後に、想定を外してしまったが故に縄張り争いで混乱する上陸部隊上層部というシーンを入れてくる辺り只者ではありません。
わかりやすい「頑固な『大人の軍人』達と思考の柔軟な主人公達」という構造をとらず、学兵・自衛軍問わずどんな立場だろうが有能なものは有能だし無能なものは無能という容赦の無い描写をする所がまた素晴らしい。この辺りがありきたりの「戦争モノのラノベ」を越えた「ラノベ風架空戦記」に本作を昇華させている要因の一つでないかと俺は考えています。


「山口防衛戦」の前作である「九州撤退戦」以降の榊涼介版ガンパレは完全にゲームを離れたオリジナルの展開を辿っているのですが、既に15巻に渡っている本シリーズが今後どういった展開を辿りどうやって物語を締めくくるのか楽しみでなりませんよ。
アルファシステムの他ゲームとのクロスオーバーと裏設定の開陳合戦についていけなくなったゲーム版の1ファンとしては、ゲーム版の世界観のみ(=他ゲームとのクロスオーバーが抑え目)で納得の行く着地点を探りつつある小説版のラストに期待を抱かずには居られないのです。

*1:ガンパレ世界での中高生を召集した学徒動員兵の名称