偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

それでも、日常は、人生は、続いていく - 「CARNIVAL」

いま思えば、いつかこうなってしまうと、初めから解っていたのだと思う。
でも、もしダメになってしまうとしても、その前にゴールに駆け込むことさえ出来れば、何も問題がないとたかをくくっていたんだ。
ゴールはまだ見えない。あの頃想像していたよりも、僕たちは長生きしすぎてしまったんだろう。

  • 「CARNIVAL」小説版より-

ゲーム版を終了させ、3年棚に積んで、5ヶ月かけて終わらせて - 「CARNIVAL」 で感想を多少書いてから小説版を読み始たのは先週の末のことでした。その後すぐに読了し、愕然として途方に暮れる俺がそこに。なんなんですかこれは……


「CARNIVAL」の小説版は単なるノベライズではなく、ゲーム本編の7年後を描く後日談となっています。
ゲームと小説がセットで一つの作品、小説版で真の完結をみる作品だ、というのはプレイ済みの人を通してさんざん聞かされていたことで、ある程度の覚悟は俺もしていました。していたのです。
乱暴に一言で表現してしまえば「世の中は辛いことばかりだけど、苦難を乗り越えて結ばれた僕ら二人なら何とかやっていけるはず」とでも言うべきゲーム版のラストから7年、あまりにも容赦なくのしかかる「現実」に押しつぶされそうになりながらあがく二人の姿がありました。
あまりにもやるせなさすぎ、読んでいて心が痛いことこの上なし。しかし、あり得る選択肢の中でもっとも可能性の高いように思える後日談でもあるのがまた辛いのです。


ゲーム版の「CARNIVAL」が醒めない悪夢の中をずっとさまよっているような現実感の希薄なお話で、それがラストで希望と共に解消された感があっただけに、後日談で強烈に突き落としてくれるのはもう見事としか言いようがありません。やられたよ。
だが、これこそが彼らにとっての真の救いだったのかもしれないという気もします。
一見すると明るいハッピーエンドを迎えたかのような小説版の主人公(ゲーム版の主人公たちは小説版では一登場人物です)の行く末にも暗雲が漂っているように思えてなりませんが、それでもあの明るい一瞬があればいつか辿り着く「ゴール」まで耐えていけるのでしょう。


そして、ゲーム・小説本編と同じくらい、もしくはそれ以上に印象に残ったのは小説版の後書き。
「小学生時代に飼育小屋の掃除をしているとき、鶏の目の前で卵を割ってしまったら、自分が産んだものなのに鶏は一心不乱にその卵を食べていた」というエピソードを淡々と語り、「あの狭い飼育小屋の中みたいな世界だな、と思います」と自作を形容して終わるあの文章を読み終えて背筋が寒くなりましたよ。ここまで突き放した視線をもって自作を眺められるものなのかと。


YouTube - Carnival OP (High Quality)



<関連記事>

ゲーム版クリア時の簡単な感想記事です。

「CARNIVAL」のシナリオライターである瀬戸口廉也がシナリオを書いている「キラ☆キラ」の感想記事たち。

「キラ☆キラ」「CARNIVAL」の二作をプレイして、表面的な雰囲気は全く正反対なのに根底を貫く人物造形やモチーフは見事になまでに共通していてこれが瀬戸口イズムかと納得した次第。一般向けのエンタメ作品としては「キラ☆キラ」の方が遥かに高みにいますけれど。どちらか一本を人に勧めろと言われたら俺はためらいなく「キラ☆キラ」を選ぶよ。