偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

だいっきらい だから、大好き - 「スキトキメキトキス」

唐突になんですが、ゆきすぎた好意のあまりに他のことが目に入らなくなってる女の子って最高ですよね。中学生くらいだとなおよし。
そんな俺がid:pub99氏の感想記事(スキトキメキトキス 感想 - ここにいないのは)で知った「スキトキメキトキス」というフリーADVがありまして。

『あいしています でもにくたらしいんです』


病院で目覚めた主人公、明菜。そこに現れたのは菜穂と名乗る美少女。
姉妹のように仲良しだったという2人。
しかし記憶を失った明菜が最初に感じたものは……『不快感』
裏切り、別離、2人だけの約束……
記憶の糸の示す先にあるものは一体なんなのか。
彼女の笑顔の裏にある真実とは。


陥れるか、陥れられるか。2人の攻防戦が今、始まる……

スキトキメキトキス - Story


スキトキメキトキス

公式サイトに行き、上記のストーリー紹介を見た瞬間にダウンロードリンクへ吸い寄せられるマウスポインタ。これは俺のために存在するようなゲームだ……!!



まるで無邪気な子犬のように、主人公を慕い、じゃれつき、そして照れる菜穂を単なる可愛らしい後輩だと思っていられるのも最初だけ。
菜穂から向けられる、べったりまとわりつくような重い「好意」の表現が素晴らしいです。主人公が菜穂に贈ったコロンの匂いが振り払っても身体から離れない菜穂の想いの象徴のように扱われているのが巧いですね。

菜穂の可愛らしい丸い大きな目も、全てを見届けた今となっては覗き込むこちらの魂を奪う何か恐ろしいものに見えてなりません。  
萌え絵の丸く大きな目を気持ち悪いと思ったのはあの夏以来ですよ(あの夏、俺は萌え絵でゲシュタルト崩壊した - 偏読日記@はてな


記憶喪失で入院している主人公とそれを見舞う菜穂の二人を主軸に展開していくため、場面転換は病院の中に限られ会話の相手もほぼ菜穂のみ。
が、それ故に二人の精神面でのせめぎ合いが強調されています。記憶喪失という設定も、短い物語の中で主人公と読み手の一体感を高めるのに役立っています。

菜穂の好意を素直に受け取りすぎても、逆に不快感に従い積極的に陥れにかかっても、ふたりの行く先は一筋縄ではいきません。ちょうど「陥れ」の度合いに応じた全部で5つのエンディングが用意されています。
なかでも他を全て見たあとに進めるEND5の、互いに憎しみ合いながら依存し合っているかのようなラストはこの物語を締めくくるにふさわしいものでした。