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偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

「軍靴のバルツァー」(1)〜(2)

感想

軍靴のバルツァー 1 (BUNCH COMICS)
軍靴のバルツァー 1 (BUNCH COMICS)

この時代において
戦争は人々の生活の傍らに根ざしているものだった

銃口から政権が
砲口から国家が
生まれる時代──

頭の切れる優秀な軍人である主人公が、ただ一人きりの軍事顧問として派遣された同盟国の士官学校で軍制改革に辣腕をふるう。この正統派な筋立てを着実に足下を固めるようにやってくれるのでその時点で面白さは保証されます。
その上でさらに上手いと思ったのが主人公のバルツァー少佐の人物像。
19世紀末のヨーロッパの架空の軍事大国(言語・文化的にプロイセン辺りに相当)の軍人、という当時の価値観をしっかり芯に据えてキャラクターを固めており、理想主義的な軍人を描こうとして現代日本に生きる我々の価値観に引き寄せてしまうという罠にはまっていないのです。軍国主義的価値観に疑いを持たず、国家の剣としての軍隊の存在意義を微塵も疑わないバルツァーの姿は読者の我々の常識とは少しずれているかも知れません。
が、「平和なんてものは次の戦争のための準備期間だろう」 作中のこの台詞が何かのレトリックなどではなく、素直な実感として受け入れられる世界に彼らは生きているわけで。
その意味でバルツァーは実によく世界になじんだ主人公であり、さらに単に軍人的思考に凝り固まっただけではない人間だということもちょっとした描写を通じて表現して我々読者とまったく離れているわけでもないと思わせ。彼の行く末を見たいというだけで今後続刊を追うことを決めましたよ。

しかし、読んでると常に脳裏にちらつくのは、この士官候補生達が大成して軍の中核をしめるころに第1次世界大戦がきて彼らはみな戦場の露と消えるのね……という嫌な想像。考えてもどうしようもないことだとは言え、19世紀ヨーロッパの士官学校を舞台にした話というとどうしてもそこに思考が行ってしまいます……


軍靴のバルツァー 2 (BUNCH COMICS)
軍靴のバルツァー 2 (BUNCH COMICS)