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偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

数学が教えてくれたAmazonの真実 - 「Amazonランキングの謎を解く 確率的な順位付けが教える売上の構造」

Amazonランキングの謎を解く: 確率的な順位付けが教える売上の構造 (DOJIN選書)
Amazonランキングの謎を解く: 確率的な順位付けが教える売上の構造 (DOJIN選書)


「数学による現実のモデル化」の威力を鮮烈に見せ付けられた1冊。
本書のタイトル、「Amazonランキングの謎を解く」という表現からはAmazonがランキングの決定に採用している複雑な仕組みを推定するような内容を想定してしまいますがさにあらず。
「買われた瞬間にランキングの先頭(1位)に移る」という簡単な原則で全ての本のランキングが決定されていると仮定。(一列に積み上げた積み本の山から任意の本を選び出し、山のてっぺんに戻すのをイメージしてもらえばわかりやすいかと)
確率論的なアプローチにより「確率順位付け模型」というモデルを考案し、実際のAmazonランキングの時系列推移がそのモデルにかなりの確かさで従っていることを証明。
ランキング付けを数式として表せたことによりさらに数学的な考察を進め、最後にはAmazonについて我々のイメージを覆す驚くべき結論にたどり着きます。
複雑な事象の裏に潜む単純な原則を推論から定め、そこから数学的な手法でもって理論を構築し、その理論が現実をかなりの確かさで再現していることを証明するというプロセスが順を追って説明されていく様は、まさに数学による現実のモデル化の過程を如実に見る思いでとても面白かったです。

が、少なくとも理系の高校数学くらいの知識がないと何を言っているのかまったくわからないのではないかというのが辛いところ。数学的なアプローチの部分は飛ばして序盤の理論構築と終盤の導き出された結論のみ読んでもいいのですが……
数学的厳密さを優先した、教科書のような啓蒙書としてはかなり異質な語り口も取っつきづらさに輪を掛けます。「Amazonの仕組みに興味がある」くらいの軽い気持ちで手を出すと後悔してしまうかも。

とはいえ、前述の非常に簡単な仮定からモデルを構築して現実を説明してしまうプロセスには「美しさ」のようなものがあり、とてもわくわくしながら読めたのも確か。俺は好きですよ、こういうやりかた。
それにしても、ひさしぶりに頭の普段あまり使わない数学的思考を扱う部分に血を通わせながら読みましたよ…… 知恵熱が出そう。