偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

シナオシ

シナオシ (富士見ミステリー文庫)

シナオシ (富士見ミステリー文庫)

「キリサキ」に引き続いての他人の体に入って生き返っちゃった系ミステリ第2弾。


今回のお題は「殺人を犯し、絶望の末自殺した昔の「僕」自身を止めること」
「僕」としての記憶を失い、女の身体で生き返った「僕」こと「私」が周囲の誰が「過去の『僕』」なのか突き止めようとするなか、「僕」は着々と殺人の計画を練っていく。
「私」と「僕」の2つの視点から語られる物語が一つに収束するとき、真実が明らかになる───!


「俺があいつであいつが俺で」ならぬ「俺もあいつであいつも俺で」としか表現のしようがない状態になっていた「キリサキ」を越える複雑さ。
生き返りの際に時間を超えることができる(自分が死んだ時点より前の時間において蘇ることが出来る)というトリックを構成する最大のピースが逆に物語上の最大の弱点になっている気がします。
どんでん返しとかサプライズと言うよりは「超常現象だから」で無理を押し切っているのに近い感じ。
別に本格ミステリを求めているわけではないので蘇りという超常現象を用いることに対して不満はありませんが、視点トリックのオチがあんなものなのは正直納得しかねるところがありました。