インシテミル & ニューロマンサー
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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- 作者: ウィリアム・ギブスン,黒丸尚
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1986/07
- メディア: 文庫
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前から並行して読んでいたのを2冊とも丁度読了。
古今東西の有名ミステリへのオマージュが、それも密やかにではなく露悪的なまでにあからさまに登場する「インシテミル」
逆にサイバーパンクというジャンルをこれ一作で確立したと言われている古典SFの「ニューロマンサー」
ジャンルの違いはあれど、「引用する側」と「引用される側」をほぼ同時に読み終わると色々と考えてしまいます。
どちらも「古典」を読んでない奴は語るなといった雰囲気が多少なりとも濃いファンの間に存在する界隈ですし。
俺は全く詳しくないので「インシテミル」中のオマージュのうちどれがどの「古典」からの引用なのか明示されているもの以外は判りませんでした。
が、それでも感じたのはありとあらゆる状況が「引用」で構成された環境でミステリ的な生活を人為的に強いられるというのは「古典」を知りそこからの「引用」に価値を見出すことに対して強烈に叛旗を翻しているのではないかという気がします。
実際、自分たちの置かれたオマージュだらけの環境の意味を理解できる登場人物中のミステリファン達はそろってそれがゆえに窮地に陥ったり反感を買ったりしていますし。
そして、それでいてきちんと「ミステリ」しているのが実に憎いところです。
完全に論理的に謎解きされるので「何ページ目で犯人が判ったか」といった遊びを読者の間で行うことも出来るかと。
(俺は犯人は判りませんでしたが主人公の「もう一人の知り合い」に関してはp199で気付けました)
ひるがえって「ニューロマンサー」と言えば(多少読み難いとはいえ)とても面白かったのですが、だからころこれが1984年に書かれたということが未だに信じられません。
今でこそ「電脳空間にダイブ」「脳とコンピューターを接続」といったSF的概念は一般的になっていますけど、20年以上前に既にこの域に達していたというのには驚くばかりですよ。俺ほとんど同い年だよこの本と。