偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない(上)(下)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上 (単行本コミックス) 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 下 (2) 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

十三歳のあの夏
嵐のようにやってきて 過ぎ去った時間

あの子が撃ち続けていた砂糖菓子
あたしの心もとない実弾


誰もがみんな
世界と戦う小さな兵士だった

小説版の内容を非常に良く噛み砕き、再構成した素晴らしいコミック化。
地の文や心情描写の文章で描かれていた情景たちを見事なまでの視覚的にイメージに変換して見せてくれます。
小説版の閉塞感に満ちた重い物語の内容と一見そぐわない非常に少女趣味なイラストも、「世界と戦う術を持たない無力な子供たち」である主人公達を表現すると言う意味では成功していました。


が、徹底して「普通の13歳」なコミック版での主人公なぎさもまた甲乙が付けがたく。
小説版では現実から遊離した美少女とでも言うべきイメージの海野藻屑*1も、コミック版の絵柄だとそこらのちょっと可愛い中学生です。
だからこそ序盤の言動の変人ぶり、終盤で「汚染」されていくさまの痛々しさの表現が殊更に浮き立ってきていてこれはこれで別の感慨がありますね。


メディアとしての方向性が異なるので小説の漫画化という行為には全面的には賛成できない俺ですが、コミック版「皇国の守護者」や本作といった原作を良く理解し再構成したものを見るとあながち悪いものでもないかと思えてきますね。結局のところは描き手の技量と言う事なんだろうなぁ。

*1:未読の人の為に書いておくとこれ名前です