時載りリンネ!(1)

- 作者: 清野静,古夏からす
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/07
- メディア: 文庫
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わくわくする大冒険がしてみたいな。物語みたいな。
悪党に狙われて困っている女の子を颯爽と救うような話が理想ね。
日常の中のふとした出来事から幕を開けて、次第に謎が膨らんでいく不思議な展開、中盤はミステリーあり、活劇あり、友情ありの総天然色の大冒険よ。
お待ちかねのクライマックスには悪党をやっつけて、もちろん最後は綺麗な大団円をむかえるの。
全てが終わったあと、前よりも少しだけ、世界が輝いて見えたら素敵よね!
情報・・・・・・書物を栄養源とし、200万字の本を読むことでたった1秒だけ時を止めるできる一族『時載り』。僕の隣の家に住む幼馴染の少女リンネもその一人だ。
「わくわくするような冒険がしたいな」という彼女の言葉から始まった夏休みの冒険。ただのお遊びだと思っていたそれは、「誰にも読めない本」との出会いにより、本物の冒険へと変わってゆく……
(裏表紙より引用 一部改変)
冒頭で引用したリンネの台詞がこの物語の全てを表現しきっているのでこれ以上言葉を重ねるのは無粋に過ぎないという気もしますが、とにかく良い意味でラノベというより「児童文学」なお話。
「本を巡る少年少女のひと夏の大冒険」を実に爽やかに描ききっています。
逆に、序盤から中盤まではそういった児童文学的な展開や人物で進んでいくのに「お待ちかねのクライマックスには悪党をやっつけて」の部分がだいぶ異能バトル的な方向性になっているのに違和感を感じたりもしていました。いきなり詳細な設定語りをされてもなぁ。
とはいえそれは瑣末な不満で、全体としては楽しめたので問題なし。
これはむしろ小学生くらいの子にこそ読んでもらいたい話かもしれません。小さい頃にこんな物語に触れ、「本を読む」という行為自体への興味と作中で登場する古今の名作たちへの関心を持ってくれると嬉しいですね。
また、「海底二万マイル」でなく「神秘の島」を選ぶのか! とか、リンネがおやつ(携帯用食料)として持ち歩く本が「夢十夜」って渋すぎるわ! 等々、『時載り』の栄養源として登場する本のセレクトに唸ったりもしていました。
そしてリンネ以外にもう一人登場する『時載り』*1のアメリカ文学者コレクションがヴォネガットしか判らなくて俺涙目。本読みを自認しててもこの程度か。
*1:ネタバレなので名前は伏せます