偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

「東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる」

東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる (ファミ通文庫)
東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる (ファミ通文庫)

男の子一人称でひたすら主人公の内面に寄り添うからこそ出来るこのじれったさと、「女の子のよくわからなさ」の表現! いいねいいね。
きちんと自分の恋愛感情に自覚的で、でも経験とか勇気とかがちょっと足りないから踏み出せない。そのあたりの揺れ動きを本当に丁寧に描いて良かったです。
「理由のない好意」は有りだけど「過程のない好意」は駄目だよね*1、という立場を取る俺にとって、
本作から主人公とヒロイン東雲の間に新たに加わった三人目の彼女もまた好ましかった。理由なんて、あの程度で十分なんだよね。

そして「何もかも言葉で説明すればいいってものじゃない」という本作を象徴するキーワード。小説であえてそれを言うのかと出てきた当初は少々面食らったものの、それこそ丁寧に言葉で考えすぎな主人公の内面を描いていることと相関させるとまことに上手いなあと思う次第。

*1:これは前作の感想でも書きました