さよなら妖精
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/02
- メディア: 単行本
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1991年4月。
雨宿りをする一人の少女との出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。
遠い国からはるばるおれたちの街にやってきた少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。
覗き込んでくる目。カールがかった黒髪。白い首筋。『哲学的意味がありますか?』 そして紫陽花。
謎を解く鍵は記憶の中に───
(表紙裏より)
一ヶ月ほど前に図書館で借り、そのまま置していた「さよなら妖精」をふと思い立って読了。
プロローグ数ページの時点で既に面白くなる予感が背筋を貫き、そしてそれは裏切られず。
引き込まれるままに1時間ほどで読み終わってしまいました。
中身と言えば上の紹介文のとおりのボーイミーツガール青春物語ミステリ風味なんですが、しかしただの「楽しい青春」ではなく苦さもあわせ書き切った実に清涼感溢れるお話。
地方都市の一介の高校生にとって、聞いたことも無い東欧の国*1から来た女の子などと言うのはそれこそラノベにおける異世界からやってきたヒロインのようなもの。
それが全てだと思っていた平凡な日常に、全く違う視点を持ち込み風穴を開けていくマーヤはまさに妖精です。
が、それだけで終わらせないのがこの物語の真骨頂。
ただの異邦人、ただの風変わりな仲間ではなくマーヤも意思と事情を抱えた自立した人間であり、垣間見せてくれた非日常こそが彼女にとっての日常。
日々をなんの不安も無く過ごしている現代日本の高校生たる主人公と、マーヤの間の決定的な断絶があらわになっていく終盤の苦さがたまりません。
ここで安易に仲間達でマーヤの抱える問題を解決してハッピーエンド*2という方向に持っていかなかったのはむしろプラスに働いていると思います。
タイトル通り「妖精」は目の前から去り、否応なしに現実と向き合うことを突きつけられるラストの主人公達の姿は悲しくも不思議なすがすがしさがありました。
「春期限定いちごタルト事件」「愚者のエンドロール」と読んできて、確かに面白いのだけれどいまいちパンチが足りないと思っていたところで「犬はどこだ」が俺の中で大ヒット。
その流れで読んだ今回の「さよなら妖精」もとても楽しめたので、俺もう米沢穂信についていくと決心したよ><
とりあえず新刊の「インシテミル」を買うところから始めようか。
あと、「リトルバスターズ!」のクドリャフカルートは「さよなら妖精」へのオマージュなのか? なんて巡回先で語られていて俄然リトバスにも興味が出てくる俺。
しかし同時に「『どうしようもない現実』への対処という点では『さよなら妖精』の方がはるかに上」とも言われていて微妙に不安が残ります。教えてリトバスプレイした人!!