旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。
- 作者: 萬屋直人,方密
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2008/03/10
- メディア: 文庫
- 購入: 25人 クリック: 249回
- この商品を含むブログ (103件) を見る
世界は穏やかに滅びつつあった。「喪失症」が蔓延する世界で、人々は名前を失い、色彩を失い、やがて存在自体を喪失してゆく……。
そんな世界を、一台のスーパーカブに乗って「少年」と「少女」が走る。目指すのは「世界の果て」記録と記憶を失った世界で、一冊の日記帳と共に旅する少年と少女の物語。
感想を見て回ると登場人物に個人名が存在しない(主人公達からして「少年」と「少女」でお互いにそう呼び合ってます)事について言及している記事が多いですが、俺はさほど気にならなかったり。
流石に読み始めた当初は面食らいましたけど、この作品は人物を描くというより「喪失症」に蝕まれ滅びゆく世界というシチュエーションを描く事に力を注いでいる作品なため、正直名前なんて無くても良いんですよね。それに名前が無くとも、言動や他者との関係性の取り方さえ確立されていればそこに「人物」は存在できるわけですし。
無機的な「少年」「少女」「取締役」「秘書」「ボス」「姫」等々の「登場人物の役割」をそのまま振ったかかのような名前が、「情報が喪われてゆく世界」という舞台設定に非常にマッチしていると思います。
逆に言うと、この作品には「滅びゆく世界」というシチュエーション"しか無い"とも言えるのですけれど。
終末世界でのちょっといい話な人間ドラマ+主人公カップルの掛け合いでいくらでも話を続けられそうな気がしますが、続ければ続けるだけどうしようもなくなってく気もするんだよなぁ……
あと、2話であまりにも唐突に登場する人力飛行機ネタには本当に噴いた。人力飛行機製作経験者として言わせてもらうと、あれは実際に作ってた奴にしか書けない描写だと思います。いくらなんでもマニアックすぎ。