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偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

変態さん、あなたを、しゅじゅちゅ<手術>します - 「藍坂素敵な症候群」(1)(2)

藍坂素敵な症候群 (電撃文庫)
藍坂素敵な症候群 (電撃文庫)


藍坂素敵な症候群〈2〉 (電撃文庫)
藍坂素敵な症候群〈2〉 (電撃文庫)

主人公、那霧浩介が転校初日に連れていかれたのは、医術部というちょっと奇妙な部活。
部長・藍坂素敵。ちっちゃくて白衣を纏いメスを持ち、やたらと元気な女子。部員その1、宵闇ヶ原陰子。傘を異常に溺愛するお嬢様。部員その2、黒崎空。いつもご機嫌斜めな金髪ヘッドホン女。三人ともかわいいのはいいのだけど、藍坂はなぜか手術をさせろと迫ってくる。
一方、街では“耽溺症候群”なるものが蔓延していて、その影には“おはなしやさん”の存在があり─―  フェチ系美少女学園ストーリー、ここに開幕。

(Amazon掲載のあらすじを一部改変)


実にそつなく要素と伏線を配置し、それらを見事にまとめ上げた手腕には感心するほかありませんでした。ほんと、無駄な部分がまったくないのよね。
ありがちな空から女の子が落ちてきた」式のプロローグだと油断していたらラスト1行で見事にひっくり返してくる序章にがっちり心を掴まれ、そのまま2巻まで読み通してしまいました。

その素敵な病気に冠されるべき名前は。
そう、きっと──
藍坂素敵な、症候群。

メインヒロインの名前を、そしてタイトルの意味を回収するあの下りはちょっと見事すぎて震えました。
明るく楽しい日常生活を薄皮一枚めくった向こう側には凄惨で重苦しく、気持ちの悪い世界が広がっているという作品全体の雰囲気も好きだったり。ダークな部分とポップな部分の配合の手際にも抜かりはありません。


難点と言えば、あまりにもそつなくまとまりすぎていて作中に登場する「変態」さんたちがコンテンツとして綺麗に包装された狂気になっている感のあるところでしょうか。深みとでもいうか、得体の知れない訳の判らなさのようなものが薄いんですよね。
……まあ、現状でも十分に読者を滅入らせる「気持ち悪さ」ですし、メインとなるのは自分の中の狂気を飼い慣らして他者の狂気に挑む医術部の面々(特にメインヒロインの素敵)なのでいいのかもしれませんが。


俺にとってこれが初めての水瀬葉月作品でしたが、このダークさはなかなか気に入ったので「藍坂素敵な症候群」については続刊を追いかけてみようと思う次第。他の作品についても余裕が出来たら手を出してみよう。