偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

"学園ハーレムエロゲ"の洗練の極み - 「カミカゼ☆エクスプローラー!」

カミカゼ☆エクスプローラー! OFFICAL WEBSITE

今より少し未来、気候や地表の変化が起き、人の生活圏が少し狭くなってきた時代のお話。
緩やかに変わる世界に呼応するように、若い世代の間で「メティス」と呼ばれる特殊な力を持った者が現れるようになる。
不思議な風が吹くという逸話が残る「上ヶ瀬市(かみがせし)」では、「祐天寺グループ」を中心とした複数の企業による出資のもと、
一部浸水した区画を埋め立てて「澄之江学園(すみのえがくえん)」が創設され、特殊な力を持つ者の育成・教育が行われていた。

主人公、速瀬慶司(はやせけいじ)は、そんな能力とは無縁の生活を送っていたが、ある日、学園のエージェントと名乗る人物からなぜかスカウトされ、澄之江学園に入学する事に。
そして、ふとしたきっかけで、澄之江学園とその周辺の問題調査(という名の困り事解決)をする「学園都市調査研究会(通称:アルゴノート)」に参加するようになる。
これまで体験した事のない出来事にとまどいながらも、胸を躍らせる毎日。
そんな中、澄之江学園そして再開発された上ヶ瀬市には妙な噂があると耳にするのだった――。

カミカゼ☆エクスプローラー!: STORY

昨年末から少しずつ進めていたカミカゼ☆エクスプローラー!をようやく全ルート読了。
まさに洗練の極み……すごいよ、これ。
特に何も考えず 風花→宇佐見先輩→琴羽→まなみ→美汐 という順でクリアしたのは、結果として設定開示の順序やラストの大団円ぶりの意味でかなり良かったです。あからさまにメインヒロインの美汐ルートを最後に回しておいてよかった。

「超能力者を集めた学園を舞台にしたエロゲー(主人公・ヒロイン共に能力者)」という設定から萌えオタの皆さんが想像するものの枠から一歩も外に出ない。……けれど、その枠の中でちょっと類をみないレベルでありとあらゆるところが巧妙に出来ている。冬コミで本作についてプレイ済みの人と話した際に出てきた「減点法で採点したら100点になるゲーム」という表現はまさに言い得て妙でした。
絵は可愛らしく、文章はストレスを感じさせない平易で読みやすいもので、主人公は格好良く、お話はいちゃラブとシリアスとの配分が絶妙で、もちろんHシーンは濃厚に。ヒロイン5人中3人は昔から主人公のことを好きで残り2人のうち1人も主人公と出会った瞬間に一目惚れしているというお手軽さも、なにやらそれをすごく自然なこととして描いてくれるので違和感など全くなし。

なにか深いものがあるようにほのめかしながらも、それ以上の深い部分には一切触れないという世界設定の扱い方も上手いです。
海にほんの少し潜るだけで沈んだ街並みが海底にあり、ヒロインと二人でデートする海岸の背景には海から付きだした廃墟のビルが映り、ヒロインと二人きりになりたいと出かける街外れは過去の津波と海面上昇によるゴーストタウン。主人公たち若い世代にメティスと呼ばれる超能力が発現した理由だって、世界的な海面上昇により生活圏が狭まり追い込まれた人類が進化を模索する過程で生み出したというもの。そしてメティスを使えない旧人類と使える新人類の対立という火種も世界の裏にはくすぶっていたり。
こういうちょっとした近未来SFのような設定を出してきながらも、お話のメインには決して持ってこないあたりのバランス感覚。だってそうですよ、主人公やヒロインたちにとってはこれらは日常の風景であって何も特別なことではなく、大事なのは目の前にいる恋人との甘い生活なのだから。

ちなみに同じ「超能力者を集めた学園を舞台にしたエロゲー(主人公・ヒロイン共に能力者)」という設定からプレイ当初に想起したのは「そらをみあげて想うこと」でした。しかしこちらは俺の考えたすごいSF設定を観てくれ感がどうにも強く、エロゲーとして洗練の極みにある「カミカゼ☆エクスプローラー!」とは比較になりませんね。

そんな本作で俺が唯一つらかったところと言えば、出てくる娘たちが軒並み度外れた巨乳すぎて食傷したくらい。俺、たぶん数年分の2次元巨乳をこのゲームで摂取した気がするよ…… もうお腹いっぱいだよ……
攻略対象ヒロイン5人中で胸が控えめなのは宇佐見先輩だけで、その彼女も以下のように『小さい』とはあまり言えない見た目です。


このくらいのサイズで作中世界ではものすごい貧乳扱いされ、本人もかなりコンプレックスを持っているというのが恐ろしい。なんなんだこの世界は。

関連リンク

「無難さとは王道の別称であり、王道とは普遍的に支持されるフレームワークなのであり、それは磨き上げれば一流の武器になる。
無難さとマンネリズムを指摘される、箸にも棒にもかからない「萌えテンプレゲー」なるものは数あるが、近年最強の無難さとして、本作のあり方は評価されてしかるべきだろう。」
リンク先記事のこの評価はまさに本作をよくとらえていると思います。

過去に本家サイトにアップした「そらをみあげて想うこと」レビュー。


カミカゼ☆エクスプローラー! 通常版
カミカゼ☆エクスプローラー! 通常版

「かたわ少女」完全版リリース&日本語化翻訳ボランティア募集


かたわ少女開発者ブログ: かたわ少女完全版 リリースのお知らせ

インターネット発、2012年1月4日 - 本日、Four Leaf Studiosはかたわ少女 完全版を無償にてリリースいたします。世界各国から集まった21人の開発者が、イラスト・音楽・シナリオ・プログラム・そして演出に関わってきました。現在に至るまで、数えきれないほど多くの人々が開発に協力してくれたことは言うまでもありません。これまでの5年間は長い道のりでしたが、ついにその日がやって来ました。

かたわ少女開発者ブログ: かたわ少女完全版 リリースのお知らせ

各種2chまとめサイト経由でかなり話題になっているのでもう知っている方も多いでしょうが改めて紹介。
2008年の11月に公式サイト開設をこのはてなダイアリーで報じてから3年弱、ついに「かたわ少女」が正式に公開されました。
2008年初頭に最初に日本へ情報が紹介されてからずっと追いかけ続け、情報が出るたびに定期的に取り上げ、ついには日本語化チームにも参加。ここ数年ずっと関わり続けてきた身にとって、完全版の完成の報はまことに感無量ですよ。

そして、単なるリリースのお知らせだけでなくもう一つ。

日本語訳チームより、今後の対応とメンバー募集のお知らせ

今回リリースされる「かたわ少女完全版」は英語のみでの提供となります。日本語への翻訳は、完全版のリリース後に当チームが担当します。翻訳にあたっては開発者の許諾をいただいています。
(他の言語についても同様に、各言語の翻訳チームが作業を行います。)

(中略)

つきましては、翻訳に関わる作業を手伝っていただけるボランティアの方を追加で募集いたします。詳細については別記事にてお知らせします。
日本語版作成にあたってはさまざまな作業があります。英語の知識は必ずしも必要ではありません。関心のある方は続報をお待ちいただくか、本記事へのコメントやメールにてお知らせいただければ幸いです。

かたわ少女開発者ブログ: かたわ少女完全版 リリースのお知らせ

いろいろなところで紹介されるにあたり、こちらの日本語化ボランティアを募集しているという情報が抜けているようなので改めて紹介。
日本語化チームへの応募は完全版リリース告知記事の末尾に記載の連絡先まで是非どうぞ。「日本語化待ち」とか、口を開けてただ待ってるだけで君はそれでいいのかい?

2011年振り返り

インプット部門

まずは本やゲーム、映像作品など俺が受け取る側だったものたちを通して2011年を振り返ってみます。

面白かった……とは口が裂けても言えないものの、俺がTwitterはてなダイアリーで感想を書いたおかげで妙な方向にヒットしてしまった「宅配コンバット学園」はここで外せません。うぬぼれでも何でもなく、あのとき俺が読まなければ本作がこんなに悪い意味での知名度を得ることはありませんでした。
面白かったは面白かったものの期待していた方向と違ったのは「ツンデレでヤンデレな幼馴染 小鳥遊双葉さんとHなことをするゲーム」 重点を「ヤンデレ」においているものだと思ったらどうも扱いが俺の好みではありませんでした。だがそのぶん素晴らしく精度の高いツンデレ幼馴染み描写を堪能させてもらいましたが。
同じくノベルゲームでは早狩武志の久しぶりの新作「恋ではなく ―― It’s not love, but so where near.」ががっちり俺の心にヒット。早狩流の恋愛観・創作観をそのまま濃縮して詰め込んだかのような作風僕と、僕らの夏からずっとファンを続けてきた身にとっては最高のごちそうでした。俺の中でのベスト早狩作品は今のところ「恋ではなく」で決まりです。
ノベルゲームで心に残ったのが「恋ではなく」なら、小説は「ゴールデンタイム」。前作の「とらドラ!」で見せてくれた巧みさはそのままに舞台を大学に移し、自分の身に引き寄せられる痛々しさが大幅アップ! 学生時代のサークルの先輩にヒロインの香子と性格容姿ともに人物が被りすぎている人がいて読むたびに彼女を思い出してしまって辛い。
そして小説以外のノンフィクションでは「ロボット兵士の戦争」が図抜けていました。様々な無人兵器と共にある現代戦の姿、"ロボット兵士"を戦友とする米軍の姿は凡百のフィクションの想像力を軽々と飛び越えています。
ゲーム、本、ときたら次はアニメ。ここで取り上げるのはそう、当然ながら魔法少女まどか☆マギカ 始まった当初は特に入れ込むこともなく見ていたのが杏子登場(5話)から急に熱中しだして最終回をニコ動での配信から20時間ちょっと早く見るために上京したり。2〜4月あたりの自分のTwitterでの発言を見ると本当にまどか☆マギカの話ばかりしていますからね。TVアニメのブルーレイを全巻揃えたのもまどか☆マギカが初めてです。

アウトプット部門

2011年は同人小説サークル「宇古木亭」としての活動が大変盛んな年でもありました。5〜7月と3ヶ月連続で上京してまどか☆マギカシュタインズゲートオンリーイベントに参加し、さらに8月の夏コミでは自分のサークルの新刊+寄稿×2という過去最大のことをやりました。おかげで8月の頭はおよそ24時間おきに何かの締切がやってくるという状態が数日間続き、最後の方は自分が何をやってるかよくわからなくなってきそうでした。あれを乗り越えたのならもう何でもできる気がする。
しかし前半に頑張りすぎたおかげで夏コミ後はすっかり虚脱してしまい、冬コミにも落ちたので9月以降は活動を全く休んでしまったのは少々残念だったかも。
また、もう一つの活動として「かたわ少女日本語訳プロジェクト」としてイベント参加をしたのも大きいところ。5月のコミティアに始まり、夏コミ・冬コミとイベントに参加。このゲームを楽しみにしてくれている方々とイベントの場で直接ふれあえたことは、翻訳作業に対するモチベーションを大きく高めてくれました。


以上、a-park/宇古木蒼としての2011年を簡単に振り返ってみました。
2012年も良いインプットを得て、良いアウトプットが出来ますよう。

「かたわ少女」 夏コミ発行の公式同人誌がPDF公開

かたわ少女開発者ブログ: クリスマスプレゼント:かたわ少女既刊同人誌 PDF公開

Four Leaf Studiosと日本語訳チーム共同で、みなさんにクリスマスプレゼントをお届けします。これまでに発行された同人誌「かたわ少女プレイヤーズガイド」と「夏の欠片」のPDFファイルを公開いたします。

なお、いずれの本にも原作ゲームと同様、クリエイティブコモンズBY-NC-ND(表示-非営利-改編禁止)が適用されます。

かたわ少女開発者ブログ: クリスマスプレゼント:かたわ少女既刊同人誌 PDF公開

2011年夏コミで発行された同人誌「かたわ少女プレイヤーズガイド」「夏の欠片」(イラスト集)の2冊がPDFで公開されました。開発チームからの粋なプレゼントですね!

「かたわ少女」完全版リリース日が2012/1/4に確定

かたわ少女開発者ブログ: かたわ少女完全版 2012年1月4日リリース


2011年中と予告されていた「かたわ少女」の完全版リリース日が2012年1月4日に決定との告知が開発ブログで出されました。

長かった…… ここまで本当に長かった……

2008年2月の日本での情報の初出(dekunology: 海外有志が制作中の同人ギャルゲー『かたわ少女』がすごい)から4年、ついにこの日がやってきましたよ。
公式サイト開設を報じた俺の記事が痛いニュースに載ったり、ひょんなことから日本語版翻訳チームに参加したり、いろいろあった4年だったね…… 思わず正式版がリリースされる前のいまから思い出を回顧してしまいそう。


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