火星縦断
- 作者: ジェフリー・A.ランディス,Geoffrey A. Landis,小野田和子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/05
- メディア: 文庫
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時は21世紀なかば、
二度の失敗の後に三度目の正直として送り込まれた第三次国際火星探査隊。だが、彼らを火星で待っていたのはあまりにも過酷過ぎる現実だった。
先に火星上に送り込まれ帰りの燃料を製作しているはずのプラントは故障し燃料と帰還船は失われ、救助隊を派遣しようにも地球-火星間の圧倒的な距離に阻まれそれも不可能。
彼らに残された唯一の生還手段は、火星上で全滅した第一次探査隊が残していった地球帰還用ロケットを使うこと。
留まるも死、進むも死。僅かな生還への希望に賭け、帰還用ロケットを目指し6000kmの旅が始まる──
21世紀の火星探検隊は、20世紀初頭における南極(or北極)探検隊だったんだよ!!
一歩間違えば即座に死に至る過酷な環境(どちらも道に迷ってベースキャンプに戻れないだけで死ぬしね)であること、そして20世紀初頭の極地と21世紀の火星はどちらも遭難したといっても救助隊をおいそれと送るわけには行かない場所であること。
その時点における最新のテクノロジーを結集し、優秀な人物を集めて国家や個人の威信を賭けて行われる行為である辺りも似ています。
そして同じ極地探検隊でも、極限状況の中強烈なリーダーシップのもとで各人がプロフェッショナルとして一致団結して生還するシャクルトン探検隊というよりは、本作における火星探査隊はスコット探検隊やフランクリン探検隊に近いかな。
流石にあそこまで悲惨ではないですが(特にフランクリン)
火星用バイク&自動車で進んでいたのが相次ぐトラブルで、最終的に250km先の昔の火星探査隊が残していった基地まで歩くことになってしまうのはスコット探検隊を彷彿とさせます。
学術的発見を成し遂げていっとき疲れを忘れるメンバーに対し、スコット探検隊の故事*1でもって戒めるリーダーという描写や、シャクルトンの言葉が章扉に書かれている辺りからも俺が言うまでもなく著者がこの辺りのことを意識していることは伺えますね。
*1:遭難しかけているのに大量の学術試料を持ち帰ろうとして消耗した