偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

「Steins;Gate」プレイ途中感想

「あの時の俺に言ってやりたい。
 迂闊なことをするなと。軽率なことをするなと。見て見ぬフリをするなと。もっと注意を払えと」

「きっと、未来を変えてね。今みたいな、自由な世界に変えて」

「あたしは失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗したあたしは失敗」

「あなたはね、私の王子様なんだよ?」

「もしも、時間を戻せるなら、あの日のあたしを、引き留めないようにして欲しい」

「約束よ。あんたは、幸せになりなさい」

「Steins;Gate」プレイ開始 - 偏読日記@はてな


……久しぶりに、ほんとうに久しぶりにここまで時間を忘れてノベルゲームに没頭しましたよ。
全6個のエンディングうち、4個を見たところでひとまずプレイ途中感想を書いてみます。

どこかでみたような、だけど新しいタイムトラベル物語

タイムマシン/タイムトラベル理論を主題としてるだけあり、物語の核となるのは主人公が時間を移動することにより発生する諸々の事象と、それによる葛藤です。
未来からの来訪者。繰り返しによる悲劇的な未来の回避。過去改変による「現在」の消滅と、改変前の記憶を持ち続けることによる孤独。
古今の時間SFの美味しいところを総取りとでも言いましょうか。状況単体を取り出すと独創的なところがあるわけではありません。


だが、「お話の先を見たくさせる力」すなわち展開と構成の巧さはほんとうに大したもの。序盤のタイムマシン製作過程の時点で止め時が判らなかったのが、中盤以降になっては毎日プレイを止めて寝るのがほんとうに惜しかったです。
学生の頃ならぶっ続けてやって2〜3日くらいで全エンディングを見ていたでしょう。

目標を達成し悲劇を回避できるとほっとした所で一気に突き落とし、適度なタイミングで伏線を明かし、そして同じくらい適度に新しい謎を振りまき。
この先いったいどうなるのか? という単純だけど強力な興味を引いてくる力が半端じゃないです。本作がギャルゲ/エロゲ史に新しい時代を切り開いたとは言えないでしょうが、それでも「面白い話」なのは否定しようがないのです。
これまでにどこかで見たような要素を使っていたとしても、単純な引き写しでなく上手に再構成しているので「Steins;Gate」は独立した新しい物語だと言い切って全く問題ないかと。


そして、「『機関』に追われるマッドサイエンティスト」を気取って中二病に浸っていた主人公が、正真正銘の陰謀に直面して打ちひしがれ、そこから再起するという本作は正しく「CHAOS;HEAD」の流れを汲んでいると思います。
CHAOS;HEAD」を一文で要約すれば、「現実世界でアニメやゲームのようなことが起きるのを妄想していた主人公が本物の異能バトルにいつの間にか取り込まれている」と言う話でしたから。
この流れを主人公の人間的成長と上手く絡めて来ているので、中盤以降はどんどん格好良くなっていくオカリン(主人公)から目が離せません。他人とコミュニケーションが取れていない痛々しい奴だったのが見る見るうちに大人になっていきますからね。



以下、クリア順にヒロインごとにルート雑感。

椎名まゆり

主人公の二つ年下の幼馴染みにしてメインヒロインその1。
あまりにも脳天気すぎる言動に登場当初は少々うんざりしていました。が、終始一貫してぶれずに無垢なその姿が殺伐としていく物語の中でひとときのオアシスになっていき、次第にまゆしぃ(まゆりの愛称)が可愛く見えている俺がそこに。
登場人物達の中で唯一最後まで陰謀についてまったく無知なままでいるからこそ、平穏な日常の象徴となれるのでしょう。
まゆりエンドへの過程で他のサブヒロインルートに分岐する構造になっていますが、まゆりを見捨てるのが心苦しすぎて初回まゆりエンドでクリアしていました。周りを見ていると珍しいようだけどまゆしぃを見捨てるなんて俺には出来なかったよ。


にしても、「小学生の時からヘアスタイルが変わらない真っ黒な髪と太眉・趣味はコスプレ衣装製作とゲームとアニメ・バイト先は主人公も行きつけのメイドカフェ・コミケは当然のように始発列車で全日参加」と、改めて列挙するとまゆりのオタク娘っぷりが際立ちますね。
ファッションもなんというか秋葉原辺りに居そうな感じ。
しかし主人公その他はみな自身がオタだったりオタに理解があるものばかりなので、そう言った部分は作中で特別扱いされません。
逃避やコンプレックス無しに屈託無くオタライフを謳歌する女子高生というのは、むしろ2010年の高校生オタの描写としては「リアル」なのかも。

阿万音鈴羽

主人公が研究所(自称)を構えるビルの一階、寂れたブラウン管専門店でバイトする少女。サブヒロインその1。
不自然な態度と言動からから彼女の正体は何となく見当がついていましたけど、むしろ山場はそれが明かされてから。
全員で協力して鈴羽の目的を達成してやり、心残り無く見送った……と思ったところで唐突に突き落とされます。例のシーンの鈴羽の慟哭は声優の上手さをつくづく思い知りました。同じ単語を繰り返しているだけなのに、つい全部台詞を聞いてしまうのは流石としか言いようがない。


鈴羽エンドは後に待つものがはっきり描写されないぶん希望が残る爽やかな終わり方でした。
あの先に二人を待つのが長きに渡る絶望的な戦いなのは目に見えていますけど、鈴羽を一人で行かせた結果どうなるかは彼女を「選ばなかった」=他のエンディングに進んだときに描写されているわけで。

フェイリス・ニャンニャン

主人公行きつけのメイドカフェ「メイクイーン+ニャン^2(ニャンニャン)」のナンバー1メイドにして、主人公以上の中二病/邪気眼患者。サブヒロインその2。

フェイリスルートは過去改変による世界の変化と、変化した後も改変前の記憶を持ち続けることによる孤独について突っ込んだお話。
フェイリスを選ばなかったときの主人公と、フェイリスルートでの彼女が綺麗に鏡写しになっているのは見事だと思いました。
ちょっと切っ掛けがあればすぐに自分の脳内設定を長々と語る彼女のことを主人公は苦手にしていますが、つまりそれは重度の中二病である主人公の鏡だというのと符合していますね。


そして序盤の主人公がフェイリスを評して「見た目は可愛いけれど中身(中二病/邪気眼)は苦手」と自分のことを棚に上げていて、これでどうやって仲良くさせるんだ? と思っていたらタイムトラベルを扱った物語だからできるあまりにアクロバティックな処理でちょっと笑いました。
たしかにそうすれば過程をすっ飛ばして仲良くさせられるけどさ……うーん……

漆原るか

ひょんな事から知り合った秋葉原近郊の神社の跡取り。巫女服姿で神社を守る可憐な少女……のように見えるけど男。サブヒロイン(?)その3。
タイムマシンを完成させた主人公達は過去・未来の双方に渡り様々な改変を行いますが、もっとも大規模な改変が起きているのは恐らくこのるか。あれで世界が大きく変化しないのが不思議すぎる。


因果律の輪を外れて悲劇的な未来を回避するためあがき続ける中盤以降の主人公に対し、唯一「共犯者」となるのが彼女/彼。
そして「まゆりを選ばなかった」事がどんな結果をもたらすか一番冷酷に突きつけられるのもこのルートです。初回まゆしぃエンドの俺には辛いことこの上なかった。





と、長々と書いてきましたが端的に言えばこんなに書いてしまうくらい俺は「Steins;Gate」を楽しんでいると言うこと。
どうでもいい作品ならBlogで取り上げずに終わらせますもの。
残るはメインヒロインその2の紅莉栖エンド、全ヒロイン個別エンドを観たあとに残る最終シナリオの二つ。ここまでが誰か一人を選んで他の誰かを切り捨てる話で来たぶん、ラストでは「全員を救う」事を目指す事になるのではないかと予想していますがはてさてどうなる事やら。


Steins;Gate
Steins;Gate(シュタインズ・ゲート)