偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

「寄生彼女サナ」

寄生彼女サナ (ガガガ文庫)
寄生彼女サナ (ガガガ文庫)

無理矢理に典型的な「主人公の起床〜登校シーンでキャラクター紹介」というテンプレートに乗せたような序盤、おなじく無理矢理に「シリアスな戦闘シーンで締め」というテンプレートに乗せたような終盤の展開がものすごく不自然に感じていまいちお話に乗り切れず。定番の展開自体は悪いものではなく、あえてそれを選ぶという選択も十分にあり。しかし本作の場合は筆を曲げて不得手なことをしているような匂いが終始つきまとうのです。

逆に、そういった縛りから解き放たれた(ように思える)中盤のテキストはかなり好きです。会話の掛け合いやパロディの選択センスがよくて思わずクスリとしてしまうことも。具体的にシーンを抜き出したりする以前に、なんかもう単語選択の時点で素敵なんですよ。
きちんと楽しませられるコメディができており、俺としては中盤のノリをもっと強化して全編これでいってくれたら良かったのにと思いましたね。

作品の根底にある、いわゆる「ぼっち」的な問題意識についてはあまり乗れないままでした*1。抜き身で「著者の思っていること」がそのまんま出ている感があって、それゆえ共感に人を選ぶのではないかと。

*1:単純に自分の育ちと性格の問題だと思う