偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

盤上の四重奏


白い花の舞い散る時間 (コバルト文庫)(以下白)の16年前を舞台とし、言うなれば白の事件が起きるきっかけを作ったあの人が主人公です。
とはいえ直接の繋がりがあるわけでは無いので単体でも十分読めますし、白からの読者には「主人公の行く末を知っている」事を利用した強烈なミスリードを仕掛けてくれるのでこちらも満足。


友桐夏作品と言えば邪悪ヒロインと相場は決まっていますが(少なくとも俺の中では決定事項)、今回も前二作とは一味違った風味でこれはこれで良し。
天性の言葉で人を操り傷つける術を身につけながらも、箱入り娘で世間知らずなせいでいまいち空回りばかり。
序盤から邪悪モード全開なので下手をすると単純に冷たい人物になってしまうところを、外の世界に出て同世代の友人を生まれて初めて得た事に舞い上がっているところをあわせて描いて実に可愛げのある主人公にしていると思います。

しかも他の人たちも度合いは違うとはいえほぼ全員腹黒く、真意を明らかにして対決する終盤が素敵過ぎ。


しかし、「白い花〜」「盤上〜」と「ガールズレビュー」の副題が付く作品が二作出たという事は、シリーズ化も視野に入っているという事なのでしょうか。
まだまだお話を膨らませる要素はあると思うので、もし読めるのなら彼女達の行く末を見てみたいものです。
…どう考えてもハッピーエンドにはならなさそうですけど。