げんしけん(9) 特装版
- 作者: 木尾士目
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/12/22
- メディア: コミック
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長きにわたったこの漫画も遂に完結。9巻帯で「アキバ系青春物語」なんて書かれていますが、連載が始まった2002年にはそもそも「アキバ系」なんて言葉が無かったということを思うとなんとも感慨深いですね。
そして2002年の春の連載開始と同時に大学に入学し、ちょっと手違いで一年長く在学していたために完結とほぼ同時に卒業することになったという俺自身にとっても因縁深い作品でもあります。主人公笹原が大学入学/げんしけん入部をきっかけに作中でヲタとして深みにはまっていくのはまるで我がことのようでした。
9巻は単行本書下ろしを3話ぶん加え、8巻までの緊迫した展開から日常風景を改めて描いて一休みそして大団円へ、といったところ。
連載で読んだときは綺麗なラストだと感動したものですが、単行本化に当たって追加された後日談(卒業式=最終話の後の追い出しコンパの風景)が全く蛇足になって無いのがまた素晴らしいです。
斑目・咲カップルの話に綺麗にオチを付けてくれました。
それにしても完結したのを機に全巻を一通り読み返して思うのは斑目いいキャラしてんなということ。
部室で咲と二人きりになったときの話(14話) 一念発起しておしゃれな服屋に行く話(26話) 咲と二人で食事に行く話(32話) なんつーかもうタイトルが全てを表してる54話「告白」等々彼がメインの話での輝きっぷりが素敵過ぎてもう。
片思いの一般人の女の子(=咲)にアプローチすることも出来ず、いちいち自意識過剰で芝居臭い言動でうざったがられ、それなりに"濃い"ヲタクながらもそっち方面を仕事に選ぶほどの勇気もなく、適当に就職しても会社に溶け込めないで学生時代のヲタクサークル仲間とばかりつるんでる。
こうして書くと凄くダメな人っぽい(そしてそれは事実)なんですが、そんな彼を見下して笑いのネタにするわけでもなく、かといって主人公笹原のようにヲタとしての成功の道*1を歩ませてやるわけでもなく、あくまでも冷徹に「ヲタク男」として最大級のリアリティをもって描き続けたことが「げんしけん」を完全なファンタジーに陥ることなくエンターテイメントして成功させた要因の一つなんじゃないかと思います。
ある程度以上深みにはまってしまった男ヲタで彼に共感を抱かない人はそうそう居ないのではないかと。
俺ですか?自分の行動を鏡で見ているような気分になりましたが何か? 感情移入っていうレベルじゃねえぞ!!
何はともあれ、本当に面白い作品でした。
題材がどうこう以前にコマ割や展開の妙で単純に「漫画として」も素晴らしい作品だと言えるでしょう。
次回作に期待……はまだ早いので、とりあえずはどす黒いお話と評判の前作「四年生」「五年生」でも読んでみようかな。
もしくは「裏げんしけん」と一部で噂の「ヨイコノミライ」辺りに手を伸ばすか。
*1:趣味の合う可愛い彼女を手に入れて、ヲタク趣味を生かせる仕事(漫画の編集者)に就く