偏読日記@はてな

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「ボタン穴から見た戦争 白ロシアの子供達の証言」

私たちはレニングラードからウラルのカルピンスク市に連れて行かれました。私たちの学校全体が移動したのです。

カルピンスクではみんな公園に駆けつけました。私たちは公園を散歩したのではありません。公園を食べたんです。
ことに好物だったのは落葉松で、そのびっしり茂った松葉ほどのごちそうはありませんでした!

ボタン穴から見た戦争―白ロシアの子供たちの証言
ボタン穴から見た戦争―白ロシアの子供たちの証言


第二次世界大戦中のソ連軍女性兵士の証言集「戦争は女の顔をしていない」に強い感銘を受けたのは去年の夏頃。
同じ著者の手になる第二次世界大戦中にソ連の子供(3〜15歳くらい)だった人達の証言集である本書をようやく読むことが出来ました。


一つ一つでは断片的すぎる思い出し語りも、それが101人ぶんも並ぶとだたひたすらに圧倒されます。ありきたりの「戦争に巻き込まれた可哀想な子供達」という想像力を超越したものがそこに。
この記事の冒頭で引用した部分などはその良い例です。疎開先で公園に行ったと言う記述の次に「公園を食べたんです」という一言が続いたときには頭を殴りつけられたような気分でした。本物の「飢え」とはこういうことなんでしょう。


食べ物のこと、玩具のこと、兄弟姉妹のこと、両親のこと。語られるのは子供が生きている狭い世界の中で重要なことばかりで、社会全てを覆う「戦争」を総括できているとは言えないかもしれません。しかしそれ故か実感のこもった妙な生々しさがあり、証言の中で出てくるエピソードの数々が頭から離れないです。


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