偏読日記@はてな

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明かされる過去、受け継がれる記憶、試される世界 - 「ウィザーズ・ブレイン(7) -天の回廊-(下)」

ウィザーズ・ブレイン〈7〉天の回廊〈下〉 (電撃文庫)
ウィザーズ・ブレイン〈7〉天の回廊〈下〉 (電撃文庫)

シリーズ開始から8年 遂に終幕へ向けて走り出す物語

「かわいい男の子とかわいい女の子が出てきて、物理の力で戦う未来のファンタジー」 *1も、ついに7巻13冊を数えるまでに。ちなみに巻数表記とシリーズ累計冊数が異なるのは、?以降は上下巻に分かれるようになったからです。解りにくいことこの上ない。


「擬似的な核の冬に陥った22世紀の地球」という「ウィザーズ・ブレイン」世界が、何故こうなったか回想を通して1巻まるまるをかけて語られるのが今回の内容。
次々と明かされる伏線とキャラクターたちの裏の繋がりには、ここまでシリーズを追い続けてきた身にとってたまらない爽快感を伴うものでした。読み進める手が止まらないくてあっという間に読み終えてしまいました。
7(上)・7(中)がそれまでに比べて若干勢いの足りない感があって読み始める前は少々不安だったものの、そんな気持ちは全て吹き飛んでしまいました。


それにしても、学者がこれだけ活躍する、それもきちんと研究を通した活動であるラノベってあんまりない気がします。?巻の回想シーンの主要な登場人物が数学者・物理学者・大脳生理学者のコンビだものなあ。

作中の「魔法士」の正式名称が「ウィッテン・ザイン型情報制御能力者」とか、フリードリヒ・ガウス記念研究所で世界初の魔法士が「開発」されたとか頭の悪い(褒め言葉)理系テイストが素敵すぎるよね。
情報制御理論=魔法を記述するための方程式が理論を発見した三人それぞれに対応して、「理論全体の見通しが立つけど複雑」「解りにくいけど記述が簡潔」「現象の解析に使う計算が少なくて済む」の三タイプに別れているなんて、まるで量子力学における行列力学波動力学の関係のごとし。

長期に渡るシリーズの最新刊を紹介する難しさ

今回の感想で、どうでもいいディティールの話に終始してしまっているのは自分でもよく判っています。だが、そこで感じるのは長期シリーズの最新刊の感想を書くときの難しさ。


個別の巻のストーリーについてではなく、「ウィザーズ・ブレイン」という作品そのものの魅力についてはこれまでに何度も書いてきているので、いまさら書いても仕方なく思えるのです。
最新刊の内容について詳細に語っても、シリーズを追いかけてきていない人間にとっては理解が及ばないものになってしまいそうで。

が、こればかりは俺の能力が足りないだけな気もします。そのシリーズ自体を知らない人に、最新刊の紹介を通して作品の魅力を伝えられるようになりたいよ。

*1:電撃HP Vol.46での著者インタビューより