偏読日記@はてな

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立派な社会人に"なれる"? ひどい労働環境に"なれる"? - 「なれる!SE―2週間でわかる?SE入門」

なれる!SE―2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)
なれる!SE―2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫)

平凡な社会人一年生、桜坂工兵は厳しい就職活動を経て、とあるシステム開発会社に就職した。
そんな彼の教育係についた室見立華は、どう見ても十代にしか見えないスーパーワーカホリック娘で!?多忙かつまったく優しくない彼女のもと、時に厳しく指導され、時に放置プレイされながら奮闘する工兵。
さらには、現場を無視して受注してくる社長のおかげで、いきなり実際の仕事を担当させられることになり―。
システムエンジニアの過酷な実態をコミカルに描くスラップスティック・ストーリー、登場。


(Amazon賞品詳細ページより引用 強調は筆者による)

……どのへんが「コミカルに描く」なの、これ?


著者のデビュー作の「葉桜の来た夏」が好きだったので、粗筋から果てしない危険を感じながらも購入した本作。読了して胸に残ったのは何とも言えないわだかまりでした。俺、これをどうやって楽しんだら良かったんだろう。
一言でまとめれば、IT知識ゼロの新入社員がネットワーク系SEの仕事をしてるだけの話です。本当にそれだけ。
美少女上司の室見さん以外は徹底して嫌な意味で現実に地の付いたお話。平日に仕事から帰ってきて読んでいたらちょっと胃が痛くなったよ。
それなのにお話として面白くまとめているのは流石の手腕というところです。が、俺としてはその手腕をもっと違う話に使って欲しかった。

SEの過酷な労働環境が嫌になるくらい繰り返し描かれるお陰で、その環境の中で成長と成功する主人公が自ら虎口に突き進んでいるようにしか見えないんですよね。なまじっか「いい話」として上手にまとめて主人公から読者までの全てを丸め込んでしまっているぶん、一歩引いた視点で見るとかなり洒落になっていないことに気付いてぞっとしていました。2巻の刊行もすでに決まっているようですが、俺には、この舞台設定の物語をこれ以上追う勇気はないです。


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