「平城京一三〇〇年「全検証」―奈良の都を木簡からよみ解く」
下級役人たちの人事、役所間での物資の移動や食糧の授与、全国各地から納められる税の管理……
発掘調査で発見された木簡たちから、「平城京時代」を語り尽くす1冊。
ひたすら木簡の紹介と解読だけで平城京時代を語りきってしまう豪腕には感服してしまいました。
平城京の発掘調査で発掘された木簡なので都での役所の活動を物語るものがほとんどですが、税を納める際に添付した木簡などからは地方の様子についての情報も得ることができます。
それぞれの木簡の断片的な情報が、出土状況から推定される年代・発掘箇所の平城京における位置づけなどを元にした筆者の推理と考察と組み合わさると見事に当時の世相を表したものになっていく様はパズルを組み立てるのを見ているようでとても面白かったです。
著者は木簡研究を続けてその道20年とのことで、熟練した手にかかれば素人目にはただの断片情報にしか思えないものからこれほど多くの情報を引き出せるのかと感心してしまいました。