「アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム」
アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム (電撃文庫)
第4回札幌読書会(仮称)の課題図書に選定されたのを機に読んでみました。電撃文庫の大賞受賞作を発売直後に買って読むのなんて初めてかも。
「行動力抜群のアホが思いもよらない動きをしたら上手くいく」で押し切り、軽妙な会話の掛け合いで駆動してどんどん話を進める勢いの良さ、ご都合主義に落ちないギリギリのラインを走り抜けていく展開が非常に心地よかったです。
主人公は喋る拳銃、ヒロインはその使い手の少女ガンマン(表紙の娘)、舞台は開拓時代のアメリカ西部をモデル、というあまり日本のライトノベル読者に馴染みの無さそうな世界観にしておきながらここまで読ませてしまうのはたいしたもの。純粋に会話芸と物語の回し方が上手いのですよね。ネタ元を世界観に合わせてネイティブアメリカン由来の単語、スラング系英語など手垢のつかない言語にしたルビ芸がそこに花を添えます。
題材としては西部劇でおなじみ(というイメージのある)復讐劇を扱っており、事実だけ列挙すると非常に重い話になってしまうところをあくまでコメディーの範囲内に収めてしまう処理の巧さあたりもなかなか。ともすると離れたところで身を隠して撃ち合うだけの地味になってしまいそうな戦闘シーンは適度に異能バトル要素を入れることで活性化。
不満があると言えばあまりにも移動シーンをショートカットしてスピーディーに物語が進みすぎるので作中の地理がさっぱり頭に入らない(口絵に地図が付属している物のほぼ役立たず)ことくらいでしょうか。
あまりにもこなれすぎていて、本当にこれが新人なの……? とその手腕に首をひねりながらも楽しく読み終わったらあとがきを読んで全て納得。以前に電撃ゲーム小説大賞で受賞歴のある人が、受賞歴を隠して全くの新人として電撃大賞に再応募して大賞を受賞していたとのこと。なんなんですかその経歴…… そりゃ上手いわ……