偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

コミックマーケット101おつかれさまでした&2022年振り返り

コミックマーケット101おつかれさまでした

コミックマーケット101おつかれさまでした!! 今回は新刊を用意できなかったので前日夜になんとか仕上げた無料配布ペーパーのみだけでした。 次回の夏コミではきちんとした新刊を持っていきたいですね。

当日配布したペーパーをこちらで公開します。

自分がやらなかったら誰もやらなさそうなので艦これジャンルにいる間に本として出さなければ気が済まない題材(オフパコ合同、装備庁の技官明石、艦娘技術ジャーナル)は実現したので、最後に残ったこれは2023年中にぜひ出したいですね。 確かコロナ前の2019年冬頃からずっと暖めている題材なので。

自サークルの話はここまでとして、今回のコミケで感じたのは前回・前々回から比べた人の多さ。 気になったのでC99の時に記録した写真と同時刻・同地点・同画角でまた写真を撮って比べてみました。

2019年以前に比べればまだまだですが、衝撃的な寂れぶりだったC99からはだいぶ変わった印象。島中でも完売サークルをちらほらと見かけるようになっていました。 既に3回(1年)もこの体制がつづき問題はありつつも成立してしまっている以上、2019年以前の運営体制に完全に戻ることはなく今後はずっと有料チケット制が続くのではないかと思っているので、この運営体制を前提に参加のもろもろを考えていかねばならないのではないでしょうか。

よく言われる「チケット制になって徹夜組がいなくなった」の実例。 有明のホテルに泊まっているので12/31深夜0時頃に周りを軽く歩き回ってきました。歩いている人数より警備員の方が多い……!!

2022年振り返り

2022年も色々あったので簡単に振り返り記事を。

「艦娘技術ジャーナル」発行

艦娘技術ジャーナル 2022年8月号(宇古木亭)の通販・購入はメロンブックス | 作品詳細

2019年から出したいと思って企画を立ち上げていた「艦娘技術ジャーナル」 2022年夏コミでようやく出すことができました。 『艦これ世界の架空の技術雑誌』というコンセプト、絶対にやりたかったのでこれを出せただけでもう感無量です。寄稿してくれた皆さんには本当に感謝を。 定期刊行してほしいとか言われましたがあまりにも大変なのでちょっと無理ですね…… 誰か主催をやってくれるなら全力で協力はします。

車を買い換えた

2022年夏コミ閉会後にそのまま北海道に飛び、札幌~網走~音威子府~留萌~札幌 延べ600kmくらいをレンタカーで3日間で走る旅行をしていました。もともと北海道在住時代に稚内、函館、根室には行っていたので、抜けていた北東部を北西部を攻めてみたいという思いからです。 そこで何気なく借りたヤリスハイブリッドがあまりにも乗りやすく、ちょうどこれまで乗っていた2005年式ラクティスがボロボロになっていたので買い換えてしまいました。

2005年式のガソリン車から2020年式のハイブリッド車に乗り換えると15年であまりになにもかもが変わっていて、自動車ってこんなに運転しやすかったのか!???!??!? と驚くばかり。たぶん前の既に現代の自家用車の水準に達してなかっただけの気もしますが……

ブルーアーカイブにハマった

2022年の年始にプレイしはじめたブルーアーカイブ、上半期はメインシナリオと絆ストーリーをちまちま進めつつこんなもんか……と思っていたんですが、7月にメインストーリーVol.3のエデン条約編を一気読みしたらあまりにも面白すぎてどハマり。

そもそもプレイしはじめたのがエデン条約編の評判がいいのをTwitter上でさんざん目にしたからなんですが、過大評価では全くなかったです。 はるか昔、日記サイト兼エロゲレビューサイトを運営し、日々の日記でプレイ感想を書き、長文レビュー記事をアップしていたころの熱を思い出させてくれる面白さ。

本当にびっくりするくらい面白かったので、このエロゲレビューサイト時代からの読者の方がもしまだこのBlogを読んでいたらプレイしてみることをぜひおすすめしますね。「話を読ませるタイプの美少女ゲーム」の最先端はここにあるのか、という驚きがあるので。

1995年発行のコスプレイヤーもの成年向け同人誌を手に入れたので紹介する

いまや成年向け同人誌における女性キャラクターの人気属性の一つとなった感のある『コスプレイヤー』
この記事を執筆している2021年11月現在、メロンブックス通販の成年向け同人誌での”コスプレイヤー”検索結果は売り切れ品も含めて約160件。*1 これだけ存在すれば立派に一ジャンルを築いているといって過言でないでしょう。

こういった同人誌は2013~2014年ころに発祥があり、2017年くらいから大きく花開いて今に至るというのがこれまでの俺の認識でした。
よしんば知らないさらに古い同人誌があったとしてもせいぜい2000年代後半くらいなのでは、と思っていました。

しかしこの認識を覆す、1990年代に既に存在したという投稿をTwitterで見かけて驚愕。内容が気になりすぎて中古同人誌通販を漁りまくって発見、買ってしまいました。

「よくあるごく普通のアニメファン少女の転落の風景」(サメマロ)

こちらが入手した該当同人誌です。

Twitterには1993年と書いていますが、実際は収録作の初出93年・発行95年でした。

20年前と変わるもの、変わらないもの

一読して驚いたのは、作中のコスを現代のキャラクターに取り替えたら2021年でも余裕で成立するのでは、と思えるくらい2020年代のいまと変わりが無いこと。

まず収録1本目「エスカレーション」(原題「アニメファン少女によくあるごく普通の転落風景」)の展開からして、

衣装とウィッグにこだわるおかげで万年金欠の同人作家兼レイヤーの主人公。

だが即売会会場では主人公の全身総額70万円のキャミイコスよりも、着ただけコスのぽっと出の若いナコルルレイヤーの方がカメコにチヤホヤされてしまう。

ライバル心を燃やすものの先立つものが無い主人公は資金源として壁サークルの神絵師に頼ることに。

しかし神絵師に借金返済をカタにコスプレセックスを強要され続け、ついに発狂してしまった主人公は露出の高すぎる不知火舞コスで会場に現れ、カメコの前であられもない姿をさらす。

その主人公の姿を見て涙を流す着ただけコスの若いナコルルレイヤー。実は彼女がコスプレを始めたきっかけは、初即売会で主人公のクオリティの高いコスプレ姿を見たからだった────

これですからね。

キャミィ・ナコルル・不知火舞といったコスプレ対象のキャラクターを入れ替えれば、もうそれだけで2021年現在発行するコスプレイヤーもの成年向け同人誌のプロットとして全く問題なく成り立ちますよ。
レイヤーの承認欲求、コスプレ・オタクコミュニティの中での男女関係の闇あたりの描写がいまとまったく変わりなく、なんとなくもっと牧歌的な世界だと思っていたのを裏切られて驚きでした。

「コス衣装が汗と精液でドロドロ!! こんなんじゃ明日のイベントで着られないよぉ……」という現代のコスプレイヤーものエロ同人誌で定番の締めの作品もあり。
しかし90年代初頭だと手作りかオーダーメイド衣装だろうから数千円の既製品が売ってる現代とは比べものにならないダメージだったのではないでしょうか……

「厳格な家に育った少女がコスプレを通じて自分を解放する喜び、カメコに撮られて承認欲求を満たす喜び、界隈の男性レイヤーと乱交する性の喜びに目覚めるが、妊娠・身バレでの退学から自殺へ……」という話もあり、この身バレが投稿雑誌経由というのが90年代感がありました。

ストーリーには普遍性があるものの、時代を感じたのは竿役男性の造形。
これが当時なりのチャラい男性像、コスプレコミュニティ・オタクコミュニティの中での遊び人の男性像なのでしょうが、女の子の描写は20年後でも変わらず可愛らしい表現だと思えるのに男たちはだいぶ違和感ありました。2枚目とか俺はちょっと笑っちゃいましたよ。

また、実は本書は「コスプレイヤーものエロ漫画+実写コスプレヌードグラビア」という構成になっており、これも19995年時点ですでにここまで到達していたのか、という驚きがありました。

俺自身が2019年の「艦これオフパコ合同」「コスプレイヤーもの小説&漫画+全年齢コスプレグラビア」合同誌を企画した際にこれは誰もやっていないだろう……と思っていたら既に20年前に存在していたとは……
読みながら「剱岳に初登頂したと思ったら山頂に平安時代の遺物が残されていた」みたいな気分になりましたね……

どの収録作もコスプレ対象のキャラを代えれば2021年でも成り立つくらい普遍性があるものの、少しだけ違うのは「コスプレイヤー」という属性そのものには大した価値が置かれていないところ。
あくまでも同人誌即売会を巡るコスプレイヤー男女のオタクコミュニティの中での性愛のもつれを描いているにすぎません。

近年のコスプレイヤーもの作品で盛り込まれがちな、「コスプレイヤー」という属性そのものに価値を置いている部分は皆無。

ここがこの20年で最も変化したところなのだろう、と読了して思いました。

おまけ:20年間のミッシングリンク

笹松さんの調査により同じく1995年にコスプレイヤーもの同人誌が出ていたことが発掘されました。

Twitterでの反応を見ている限り1993年以前から存在した、他にもあったという声がいくつかあるためどうやら90年代初頭頃からコスプレイヤーもの成人向け同人誌は存在していたようです。
1990年代初頭はおりしもコスプレブームによりコスプレイヤーが激増していた時期であり*2それと軌を一にして同人誌も出てきていたと言うことなのでしょう。
ということはそこから2010年代中頃に盛り上がるまで、およそ20年間のミッシングリンクを埋めるコスプレイヤーもの成年向け同人誌もきっと存在するはず。次はそこを探求してみたいですね。

*1:とらのあな通販でも件数を測定しようと試したものの、成年向け同人誌のみをフィルタできずコスプレ写真集や同人AVも含んでしまうため断念しています

*2:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC

「ケムリクサ」面白かった

11話放映後に騒ぎになっているので気になり、Amazon Prime Videoで一気見→12話(最終回)の配信をリアルタイムで観てました。いやー良かった、本当に面白かった。

こういうポストアポカリプスもの、一見すると人間のようなんだけど完全に異質な存在に成り果ててていて本人たちはそれを意識してない、という描き方の話が大好きなんですよね…… その点で言うと「ケムリクサ」冒頭10分はもう完璧。りなこが切なく消滅したあとで当然のように同じ顔が4人出てくるとことか。

6姉妹それぞれにやたら尖った方向に容姿と性格が特化してるのなんなの、元はプレーンなりりからこれだけのバリエーションが生まれるのプリンセスメーカーかよ。

これは1話冒頭にも通じていて、あからさまに「説明」しないでその世界を生きているものたちの日常、普通の姿を淡々と描いてくことで現実との差異を浮き彫りにしてくんですよね。りりがもう死んでいる事なんてサラッと一言で流されてびっくりしましたよ。

初見ではそんなストレートな『めでたしめでたし』に持っていくのか!! とやや驚いてしまったものの、思い返してみれば1話ラストからずっと育んできた『好き』なんですよね。

Amazon.co.jp: ケムリクサを観る | Prime Video

感想「BLAM! THE ANTHOLOGY」

「何千キロも果てしなく続く階層都市」

この1フレーズの表現を圧倒的な絵面で表現しきった漫画版を前に、小説という媒体でどこまで迫れるかを競ったかのような短編集でした。
そのままでは巨大すぎて咀嚼できないBLAM!世界を再構成するにあたり、ミクロ(個人)に寄り添うか、その巨大さを巨大なまま扱うかの二系統の手法があり、冒頭がミクロの視点を極めた作品である階層世界における一個人の人生に寄り添う「はぐれ者のブルー」(九岡望 )  ラストがマクロ中のマクロの視点を極めた「射線」(飛浩隆)で終わっているのが象徴的。

収録作品の中で最もお気に入りなのは「射線」 BLAME!の背景設定である階層世界概念、無限に続く階層都市のイメージそのものの翻案とでも言うべきとんでもない作品でした。
並みの人間なら真っ向から立ち向かったら原作のスケールに圧倒されてしまうであろう階層世界概念そのもので創作してるってなんなんですかこれ。凄すぎる。
うたた寝する間に三千年が過ぎ、地球の質量の80%を都市建設のために消費する。時間的・空間的・物質的スケールの人智を超越した巨大さはまさにBLAME! くらくらするような情景が矢継ぎ早に繰り出される冒頭から引き込まれ、最後の最後で原作の霧亥の行動とリンクしたときには鳥肌ものでした。

「ゲームの今  ゲーム業界を見通す18のキーワード」感想

それは、こと「ゲームについて語る」となると、明らかにゲームの現状を把握していない発言や、一方的(ないし極めて主観的)な見地からの発言が、急激に増大する傾向があるということだ。 興味深いことに、普段は冷静で、畑違いの分野について見解を示すにあたっては下調べを怠らない専門家たちが、ことゲームについて語りだした途端、十年以上前の状況を前提とした分析をしたり、実体がどこにもないブームについてその社会的背景を推測したりと、いわば「勇み足」を連発してしまう。 (中略) 個人的には、これはゲームが持つ、本質的な強さを示しているように思う。ゲームには、識者をして「たかがゲーム」と感じさせる、驚異的な間口の広さがあるのだ。 (「はじめに」より)

「今」の「ゲーム」について、ありとあらゆる角度から切り込んだまさに総合解説というべき本でした。

本書で取り上げられている『18のキーワード』は以下の通り。

  1. ゲームと流通
  2. クラウドファンディング
  3. モバイルゲーム
  4. ブラウザゲーム
  5. ゲームと広告
  6. 東南アジアのゲーム市場・産業
  7. 現実世界に置かれたゲーム
  8. 実況・配信文化
  9. シリアスゲーム・ゲーミフィケーション
  10. アカデミックテーマとしてのゲーム
  11. electronic sports:デジタルゲーム競技
  12. 自作文化
  13. バーチャルリアリティ
  14. モバイルゲームのデザインと技術
  15. ミドルウェアとゲームエンジン
  16. コンピュータグラフィックス
  17. ゲームサウンド
  18. バックエンド技術

これらは(1)ビジネス (2)カルチャー (3)テクノロジー の三つの分野から選ばれたキーワードたちです。

つまり、 - ゲームを売る(ビジネス) - ゲームで遊ぶ(カルチャー) - ゲームを作る(テクノロジー)

この三つの方向から「ゲーム」への関わり方を解説しています。つまりそれはありとあらゆる方向から網羅していると言って良く、ここまで幅広いのはなかなかないかと。 「今」ということで発行当時(2015年)の最新のトレンドを取り上げておりますが、2017年初頭のいまでもまだ十分に通用していると感じました。

とはいえ18項目も扱っているため各項に割いているページ数がやや少なく、あくまでも概説以上のものにはなっていません。 多少なりとも知っている分野については目新しいことがなく、退屈な部分もあります。例えばアマチュア製作の同人ゲームと周辺文化を扱った「自作文化」の項など、俺自身が(ゲームでなく小説ではあるにせよ)同人活動に親しんでいるおかげで所与のことばかりでした。 しかし逆にまったく知らないことばかりで読んで蒙を啓かれる項ももちろんあり、たとえば「ゲームサウンド」の項などは録音した効果音とBGMをタイミングに合わせて鳴らせばゲームサウンドなど用足りるだろうと思っていたところにはとても勉強になりました。 18項目すべてについて詳しいと自負できるなら本書を読む必要は無いでしょうが、そんな超人はまずいないでしょう。

ありとらゆる角度から「ゲーム」を切り取る範囲の広さは大したもので、(やや)浅く広いことに価値があると言って良いでしょう。 読めば読むほど「ゲーム」がどれほどに巨大な存在か思い知らされる本でした。