感想「BLAM! THE ANTHOLOGY」
「何千キロも果てしなく続く階層都市」
この1フレーズの表現を圧倒的な絵面で表現しきった漫画版を前に、小説という媒体でどこまで迫れるかを競ったかのような短編集でした。
そのままでは巨大すぎて咀嚼できないBLAM!世界を再構成するにあたり、ミクロ(個人)に寄り添うか、その巨大さを巨大なまま扱うかの二系統の手法があり、冒頭がミクロの視点を極めた作品である階層世界における一個人の人生に寄り添う「はぐれ者のブルー」(九岡望 ) ラストがマクロ中のマクロの視点を極めた「射線」(飛浩隆)で終わっているのが象徴的。
収録作品の中で最もお気に入りなのは「射線」 BLAME!の背景設定である階層世界概念、無限に続く階層都市のイメージそのものの翻案とでも言うべきとんでもない作品でした。
並みの人間なら真っ向から立ち向かったら原作のスケールに圧倒されてしまうであろう階層世界概念そのもので創作してるってなんなんですかこれ。凄すぎる。
うたた寝する間に三千年が過ぎ、地球の質量の80%を都市建設のために消費する。時間的・空間的・物質的スケールの人智を超越した巨大さはまさにBLAME! くらくらするような情景が矢継ぎ早に繰り出される冒頭から引き込まれ、最後の最後で原作の霧亥の行動とリンクしたときには鳥肌ものでした。