偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

「史実→キャラ」でなく「キャラ+史実で味付け」へ - 「艦隊これくしょん」における軍艦擬人化について

艦隊これくしょん~艦これ~ DMM.com×角川ゲームスが贈る新鋭の大型戦略コンテンツ - オンラインゲーム - DMM.com

飛ぶ鳥を落とす勢いで流行中の「艦隊これくしょん」 俺も6月半ばに登録してからずっと楽しくやってます。
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いまの一軍メンバー。戦艦+航空戦艦×3+正規空母+軽空母という航空特化シフトでボーキサイトの消費がやばい。



ゲームシステム、「萌え+軍事」という組み合わせ、なぜここまで一瞬で流行したのか、攻略情報などについては俺以外がいくらでも語ってくれているのでそれらとは別の観点、本作における「艦船擬人化」について気になるところがあったので書いてみます。






兵器全般の萌え擬人化は昔から行われており、もちろん艦隊これくしょんの専売特許ではありません。
2ch発祥のFrontPage - 制服兵器兵站局、商業媒体ではMC☆あくしず。他にも例を挙げればいくらでも存在していました。


が、どうもこの艦隊これくしょんにおける艦船擬人化は、従来の擬人化とは一線を画しているように思えるのです。

たとえば雷電姉妹(「雷電姉妹」のイラスト・作品検索一覧(pixiv)
駆逐艦雷と電がスラバヤ沖海戦で敵兵を救助したという史実を基に擬人化したら、救急箱を持っているなど「史実」を連想させる要素がデザインに入ってくるのが一般的な兵器擬人化でした。しかし艦これは見ての通りああいう可愛い女子中学生で、史実についてはゲーム中の台詞のほうで触れています。


たとえば天龍。序盤にプレイヤーの皆が接する彼女は、印象的なキャラクターも相まって妹の龍田と揃って人気があります。

フフ、怖いか? by 菊のすけまる@貴サークルは落選 on pixiv


しかしこの性格や口調、史実の軽巡洋艦 天龍の要素がどこにあるのかと問われるとちょっと首をひねってしまいます。水雷戦隊旗艦として生み出された型だから勝ち気、とかそのくらいでしょうか。
華々しい活躍も痛ましい悲劇も無い、太平洋戦争開戦時にはいくぶん旧式化していた軽巡洋艦にすぎない彼女にこれだけ強烈なキャラクターを付けるというのは史実ベースのみではなかなか難しいです。
というか天龍が擬人化されたのって艦隊これくしょんが史上初なのでは……? 少なくとも制服兵器兵站局の過去ログ、手持ちのMCあくしずのバックナンバー、ざっとウェブ検索してみたかぎりでは見つかりませんでした。


次に来るソシャゲはこれ!艦隊これくしょん -艦これ-が面白いと話題に - NAVER まとめ

上記の記事に書かれているようにこの子可愛い→史実調べてみようとなるのは、史実を反映してキャラが造形されているからではけしてなく、その艦娘自体が魅力的だから。キャラクターに愛着が湧いたからより背景を知りたくなるのであって、史実での出来事がキャラクター造形に組み込まれているからでは無いと思います。

プレイヤーは、擬人化兵器たちがいかに史実を反映しているかの答え合わせをしたいわけではないので。

従来の兵器擬人化が「史実→キャラ」なら、艦隊これくしょんは「キャラ+史実で味付け」 そこに存在するのはとても僅かな差なのだけれど、たぶんこれが元ネタの大日本帝国海軍艦艇軍事に一切興味が無い層にまで幅広く魅力を感じさせている源泉なのだと俺は考えています。


そしてなぜ艦隊これくしょんがこうなったか。そこには新しい擬人化を打ち立てようという意志があった……わけではなく(有ったとしても薄く)ゲームシステム上同時に100隻近くを擬人化する必要性からこうなったのが結果として上手くはまったのではと考えています。
1回の擬人化で1~3隻程度の擬人化が主であった従来の萌え擬人化(イラスト等)と大きく異なるのはここですね。
お陰で駆逐艦、軽巡洋艦などは特に目立ったエピソードの無いようなものまで擬人化が行われています。


プレイ開始当初、特型駆逐艦が9人も擬人化されていたり、
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睦月型駆逐艦が8隻も擬人化されていたりで驚いたものでしたよ。
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吹雪型」「睦月型」として擬人化するか、ネームシップもしくは有名なエピソードのある艦のみ擬人化しようと思うのが普通だと思います。序盤に大量に手に入るコモンキャラを全部駆逐艦にするというのがまず勇気あります。よくやったもんだ。



とまあ、長々と語ってしまいましたがこれもゲーム自体が面白く、擬人化された艦娘たちが可愛く、こうして語りたいと思わせるだけのものがあるから。
記事を書いている間に資源も溜まったので、沖ノ島海域(通称2-4 序盤最難関)の攻略に移りますよ。もう2週間くらい挑み続けているのでそろそろクリアしたい。







記事の修正について追記

コメントにて指摘がありましたので追記します。

本記事の最初のバージョンでは冒頭部分に以下のTweetを載せていました。

この部分について、艦これ番外編 「史実へのリスペクト?」 : Blinking Shadowにてリンク先のさわK氏より指摘を受け、これらのTweetがさわK氏の記事の趣旨を汲んでいないこと、これらのTweetの引用が無くても本記事の趣旨は成り立つことから、該当部分を削除しております。

初めての総火演

富士総合火力演習・そうかえんとは - 陸上自衛隊

@dragoner_JP氏にお誘いを受け、富士総合火力演習(以下「総火演」)を見学してきました。土曜深夜に東京到着、日曜夜には家に帰ってくるという強行軍でしたが、生まれて初めて戦車の実弾射撃を見たりとそれだけの価値はあるイベントでした。
写真を700枚弱撮影したので、その中から良く撮れているものを抜粋。一眼レフ本体と一緒に購入しながらも、俺がいつも近所の風景とコスプレお姉ちゃんばかり撮っているおかげでほこりをかぶっていた望遠レンズが初めて大活躍しましたよ。

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「魔法少女×ロシア解放軍×東部戦線」ネタで短編書いてみた

1/29夜に何気なく投下した俺の呟きをきっかけに、Twitter(の、一部軍事趣味者の間)でミリタリ魔法少女ネタが大盛り上がり。


Togetter - 「もしも第二次世界大戦中の航空機が全て魔法少女だったら」
(盛り上がりの様子の一部がTogetterでまとめられています)


あまりにも皆が「魔法少女」という単語を連続で投稿するので、それまではみな「魔法少女まどか☆マギカ」の話をしていた日本語Twitterの"魔法少女"関連の投稿が一瞬だけ軍事ネタで埋め尽くされるというとんでもないことになっていました。


そして、言い出しっぺであるからにはきちんとした形でまとめておかないと……ということで俺の考える「魔法少女×ロシア解放軍×東部戦線」ネタで架空戦記ラノベみたいなものを書いてみました。


「魔法化戦車猟兵1944」/「宇古木蒼」の小説 [pixiv]


まとめでは「もしも第二次世界大戦中の航空機が全て魔法少女だったら」となっているのに地上で戦う戦車猟兵ネタなのは、執筆前に気分を高めようと「黒騎士物語」を読んだ影響です。俺もお前も戦争という名の病気だ!

韓国戦争記念館に行ってきた

@氏・@氏・@氏と共に9/4深夜にソウル到着、9/5見学、9/6朝にソウル発 という強行軍で韓国戦争記念館へ行ってきました。


朝10時から夕方18時まで滞在してもまだ全ての展示をしっかり見られなかったくらい広大かつ充実した博物館でした。日本語対応も意外なほどしっかりしていて、ほぼ全ての展示に日本語の解説文と音声ガイドがついています。そこかしこのモニターで流れるビデオでも日本語バージョンを選べるという親切さ。

とにかく展示物の数が多く、前庭に展示してある装甲車両・ヘリコプター・航空機を駆け足で見て回るだけで1時間半くらい経っていましたからね。あそこは魔窟だ……



特別展示室におかれていたK2戦車(2010年現在開発中の韓国最新戦車)近づいて触ったり出来ました。


全部で300枚弱も撮影した写真はa-park's fotolife - 韓国戦争記念館にアップロードしました。何を撮ったか覚えているうちにきちんとした旅行記を書きたいところですが、写真の枚数を考えるとちょっと尻込みしてしまいますね。

密林の砲兵、かく戦えり - 「ニューギニア砲兵隊戦記」

ニューギニア砲兵隊戦記―東部ニューギニア歓喜嶺の死闘
ニューギニア砲兵隊戦記―東部ニューギニア歓喜嶺の死闘

「歩兵から見た戦争」「水兵から見た戦争」「パイロットから見た戦争」はフィクション・ノンフィクション共に溢れてるけど、近代戦における「砲兵から見た戦争」がいったいどんな風景になるのかちょっと知りたい

http://twitter.com/a_park/status/1516354278

今年の4月、Twitterで俺がふと漏らしたこの呟きに対して「砲兵から見た戦争」の好例として教えてもらった本書。
読んでみれば「砲兵の目から見た戦争」、すなわち最前線の砲兵の日常風景を知れただけではなく、「優秀な指揮官が持ち前の頭脳でもって逆境を乗り切る話」としても非常に面白い本でした。


自らが率いる砲兵中隊の編制とその運営に始まり、南方への移動の船上から現地についてまで様々な創意工夫を繰り出して問題を解決していくさまは読んでいて痛快な限り。
自伝に近い事を差し引いても、この著者が相当に頭の切れる指揮官であることは疑いないと思います。
制空権を完全に奪われたなか、1個中隊たった2門の砲でオーストラリア軍砲兵連隊とやり合い撤退まで砲を完全に喪わなかった(1門は途中で喪失)という実績だけで十分なのではないかと。


……だがそれ故に、「個人の創意工夫」ではどうにもならないことが厳然と存在するのが浮き彫りになるのですけれど。


いくら陣地構築を工夫しようが砲の数が少ないのはどうにもなりませんし、どんなに補給に気を配り砲弾の蓄積に努めようが元々の補給が少ないので限界はあり。
ニューギニアにおける戦闘中、一回しか現地の地図を見たことがなかった」(つまり地図無しで戦っていた)それ故に地形の把握には気を配ったなんて平然と書かれていてどう反応していいのか困りました。地図無し・事前情報無し前線までの100kmを行軍させるってありなんですか……?


また、読んでいて砲兵が「数学と物理学で戦う」兵科だというのを実感することしきり。

  • 1メートル四方に1つ砲弾の破片を散布できるだけの密度で射撃が出来ればその場に居る敵を全滅させることが出来る
  • 中隊の能力からすると上記の密度を実現するには2ヘクタールに3分間の集中射撃が必要
  • 対象となる地域は12ヘクタールなので6回の集中射撃が必要なため、必要砲弾数は378発(計算式は省略)
  • しかし実際は100発弱しか打ち込んでいないので敵に与えた損害は10%くらいではないか

筆者が上官から砲撃の成果を訊ねられた際の返答がこれで、精神論やら何やらの入り込む余地が全くない冷静なさまに驚いてしまいました。
当たり前の話といえばそうなんですが、何もかもを弾道学に支配されるからこその考え方は俺にはとても新鮮でした。


本書がとても面白かったので、他の地域・時代における「砲兵の戦争」についても類書を探して読んでみたいと思っているところ。ニューギニアの密林で2門だけを運用するというどちらかと言えば特殊な状況での話だったので、もっと大規模な砲兵戦についても読んでみたいです。