ウィザーズ・ブレイン(1)
- 作者: 三枝零一,純珪一
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2001/02
- メディア: 文庫
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帰省した際に地元のブックオフで3巻までまとめ買いしといたものを崩し始め。
「独特の戦闘描写が設定ヲタにお薦め」(意訳)みたいなことをまいじゃー辺りで書かれているのを見て買ってみたんですが、確かにこりゃ凄いわ。
脳内に埋め込んだ生体コンピューター「I-ブレイン」により世界を構成する情報を操る「魔法士」たちの活躍するお話であり、その名のとおり彼らは「魔法」を使うのですがこの作品が異彩を放つのはその扱い。
「自分の運動能力・知覚能力を増強することにより常人の数十倍の速度で行動」なんてのは序の口、「近接空間内の全物質の座標、運動量を初期値とした3秒先までのニュートン力学的未来予測」*1やら「周囲の気体分子のエントロピー直接操作」(つまり何も無いところから炎やら氷やらを出現)等々無駄に理詰めな「魔法」描写が素敵です。
最強なのは台詞引用で使った、周囲の物理定数(光速度、万有引力定数etc)を操作して自分に都合の良い世界を作りだす「自己領域」でしょうけど。
移動速度が通常時の3000万倍とかデタラメにも程がある。
I-ブレインの演算能力の助けを借りナノ秒単位で思考する魔法士たちが、引用した台詞のような脳内へのコマンドを連発しつつ戦う戦闘描写は素晴らしいバカSF(褒め言葉)だと思います。
お話自体はまずプロットありきでキャラ立てや諸々の描写がいまいち、とまでは落ちずとも何とか読めるくらいのレベルで特筆すべきことはありませんけど、上記の「魔法」描写だけでもうお腹一杯。
描写やなにやらは修練によって上達することが出来ますけど、こういう素晴らしいバカSF(褒め言葉)を思いつける発想というのは唯一無二なわけで。
とりあえずシリーズの続刊も読んでみようと思います。
あと、どうでもいい話ですが登場人物の名前で「黒沢祐一」「七瀬雪」ってどうみてもアレだよなぁ…