偏読日記@はてな

本を読んだりゲームをしたり、インターネットの話をしたりします。小説も書きます。

青春は、とっても苦くて、少しだけ甘い - 「ハーフボイルド・ワンダーガール」

「あたし……本当はちっちゃな頃から」
ずっと片想いだと思っていた女の子から受ける突然の告白――そうして始まったのは、バラ色の生活ではなくて……事件だった!!

身に覚えのない嫌疑に戸惑う主人公の前に現れた助っ人は、ミステリー研究会の会長・佐倉井綾であった。
推理に行動に何かと大胆な綾と、沈着冷静でちょっぴりヘタレな俊紀。そんな迷(!?)コンビで調査を開始するのだけど……。
一迅社文庫公式サイトより引用)

ハーフボイルド・ワンダーガール (一迅社文庫)

ハーフボイルド・ワンダーガール (一迅社文庫)

はてなキーワード「早狩武志」の作成者にして、唯一のメンテナとしては買う以外の選択肢など何処にありましょう。
もともとゲームでも非常に小説的な文体で書く人だったので、「ゲームライターのラノベデビュー」という部分に不安は全くなし。というか、元々早狩武志は同人小説畑上がりの人ですからね。
内容と言えばいつもの早狩武志……というのでは何を言っているのか判らないどころか説明責任を放棄しすぎなので後で詳述しますけど、これまでの早狩作品に頻出する要素を濃縮し、余分な部分をそぎ落としたような作品。
読了直後にTwitterに感想を色々と投げていて、そこでほとんど感じた事を言い切ってしまっているので、まとまらないながらもそのまま転載。

早狩武志の書く恋愛物語ってのは皆「すれ違いとその結果による失恋」のお話なので、まさにこれまでに書いてきた要素を全てぶち込んだ作品だな>「ハーフボイルド・ワンダーガール」 / 端的に言うと「初恋は実らない」か?

Twitter / a_park: 早狩武志の書く恋愛物語ってのは皆「すれ違いとその結果による失 ...

あと、自らの放り込まれた望まれない環境への反抗と受容というのもあるな>早狩作品を貫くモチーフ  「僕と、僕らの夏」だと故郷の村を沈めるダム建設だし、「群青の空を越えて」なら戦争、「潮風の消える海に」は親子関係と親に決められた望まない婚約者

Twitter / a_park: あと、自らの放り込まれた望まれない環境への反抗と受容というの ...

早狩たんは男女を問わず振られた人(または「勘違いで自分は振られたと思ってる人」)を書くのが好きすぎるので、その趣味が爆発したのが「ハーフボイルド・ワンダーガール」だと思う/エロゲシナリオだと大体は勘違いで終わるんだけど、今回はちょっとガチ過ぎる

Twitter / a_park: 早狩たんは男女を問わず振られた人(または「勘違いで自分は振ら ...

「幼い頃からの恋心は絶対じゃない」というのは、まんま「僕と、僕らの夏」だな/……というか、あの幼馴染みを普通に受け入れられちゃう俺は早狩作品に調教されすぎ?  邪悪っ娘萌えと言う観点から見ると純粋で良い娘じゃないですか

Twitter / a_park: 「幼い頃からの恋心は絶対じゃない」というのは、まんま「僕と、 ...

早狩武志作品の女の子達を「リアル」というのはどうも語弊があるんだよなー  無味無臭の「萌えキャラ」からの脱却をめざして、逆に露悪的すぎてファンタジーになっちゃってるというか

Twitter / a_park: 早狩武志作品の女の子達を「リアル」というのはどうも語弊がある ...

ゴム製品(比喩表現)への妙なこだわりは「ハーフボイルド・ワンダーガール」でもやっぱり健在でした

Twitter / a_park: ゴム製品(比喩表現)への妙なこだわりは「ハーフボイルド・ワン ...


「身に覚えのない嫌疑」が完全に俺の事前の想像を絶していて*1、ここまでやるのか!! と読み始めた当初は驚いたものですけれど、逆にそれだけハードな展開だからこそ探偵役であるヒロイン、佐倉井さんが一服の清涼剤になっている感が。行動力に溢れて積極的だけど、その実ただの耳年増で純情って絶妙にファンタジーで素晴らしい。

彼女が存在せず、主人公と幼馴染みの二人だけでも物語は成り立ったでしょうけれど、それでは本当に読者の心をえぐりすぎる。


そして、読んだ誰もが問題にするであろう幼馴染みの彼女については、感情的に納得できるかどうかと物語的に整合性があるかどうかは別の事、と言うのを肝に銘じておきたい所。
俺も本当にはらわたが煮えくり返る思いでしたけれど、だからといって頭ごなしにあり得ないと否定する気にもなれなかったり。ああいった問題というのは理性で割り切って解決できない最たるものだし、結果として幼馴染みの彼女がああいう行動に走るのは十分に「あり」だと俺は思います。
いや、もし俺が体験したら主人公同様に怒り狂うと思うけどさ。


それにしても、「僕と、僕らの夏」のシナリオライターとして知ったときにはまさに知る人ぞ知る存在だった早狩武志が、ラノベデビューまでして一気にメジャーになっているのには隔世の感があります。4年くらい追いかけているけれど、まさかここまでになるとは……

*1:あのあらすじから想像できる人はエスパーか何かだと思う