偏読日記@はてな

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建築基準法を知れば風景の見え方が変わる! - 「写真で学ぶ建築基準法」

写真で学ぶ建築基準法 (エクスナレッジムック)
写真で学ぶ建築基準法 (エクスナレッジムック)


斜めに欠けた高層ビルの上層階。鉄線で補強された高層階の窓。断面形状が四角形でなく扇形のビル。
街中で何気なく目にする様々な建築物の形状が、建築基準法のどの条文をどう解釈して決まっているかを写真を使って非常にわかりやすく直感的に解説しているのが本書。

たとえば陽光を確保するための道路斜線規制についての説明で、

「建築物の各部分の高さは、原則として前面道路の反対側境界線からの水平距離に住宅系地域は1.25、それ以外の地域は1.5(用途地域の指定のない区域では、1.25または1.5を特定行政庁が定める)を乗じた数値以下としなければならない」

文章でこう表現されても建築を専門にする人でないかぎり何を言っているのかさっぱりでしょう。しかしこれも、前面道路の反対側から1.25:1の割合で引いた斜線が綺麗にビルの上部の斜めに欠けた部分と一致することを写真でもって示されるとすぐに納得できます。
さまざまな斜線規制の軽減措置についても個別の例を挙げて写真付きで解説しており、よくもこれだけ具体例を集めてきたものです。

もちろん建築基準法によって決まってくるのは建築物の外観形状だけではありません。たとえば非常階段はその階の各居室から定められた距離以内で非常階段までたどり着けなければならないという規定があり、それを元に集合住宅の非常階段の数などは決まってきます。これを読んでから自分の家(俺はマンション住まいなので)の構造を見直してみて、たしかに規定通りに非常階段が配置されていると感心していました。

他にも鉄線入りガラス窓が実は対象建築物が防火地域・準防火地域に建っている場合に要求される耐火設備だと知って驚いたり。ずっと単なる叩いても割れないようにする補強だと思っていましたよ……


こういった建築基準法と現実の建築物の写真の対応例がおよそ70件ほど紹介されており、何気なく目にしていた街の建築物たちの形状・構成が、その実どれほど多くの規制の下で成り立っているかということを写真によって一目瞭然に理解させてくれる良著でした。建築を専門にしていないからこそ、全てのページが新鮮でとても面白かったですね。
本書を読むと本当に街を見る目が変わりますよ。俺はこれを読んでから、あの形状はあの規制のせいか……と街を歩いていて建物を見る度につい考えてしまいます。斜線規制がきついため建物が妙な形状になりがちな密集した都会に住んでいる人には特にお勧め。