偏読日記@はてな

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樹海人魚(2)

ミツオは死んだ。
どれくらい死んでいただろうか。
ミツオがぽっくりと死んでいると、だんだんと空が明るくなってきた。
辺り一帯を、薄目にも眩しい茜色の光が差している。
「あ…………死んだ…………いや………生き返った?」

この本文転載テキスト、何を言っているかさっぱりわからないと皆さん思うところでしょうが、それは当然です。
俺だってわからないよ!転載しててあまりの意味不明さに指が絡まるよ!


樹海人魚 2 (ガガガ文庫)

樹海人魚 2 (ガガガ文庫)

東京行きの飛行機の中で読了。中村九郎の文章はデビュー作「黒白キューピッド」の時点からそのあまりの独特さで有名であり、俺は樹海人魚(1)でそれをとくと味わってもう金輪際こんな文体は読めない/読まないと決意したものでした。でも表紙イラストに惹かれて2巻も買ってしまう程度の決意だったようで。


日本語で書かれていることは認識できるし、作中で「何か」が起こっていることまでは判るものの、全く展開が理解できない「樹海人魚(1)」の序盤などに比べれば遙かに「読みやすく」なっています。
あのときほど真剣に自分の読解力に対する自信が揺らいだことはありませんよ。それくらい1巻の序盤は何が起こってるか判らない。

それでも「悪文」の見本のような表現と文体が2巻序盤には連続し、やはりかなり辛いです。あれらの部分を何の苦痛もなく読めるという人が居たら会ってみたいです。俺は何度途中で読むのを止めようと思ったか判りません。
しかし読んでいるうちに次第に違和感がなくなっていき、ラスト周辺はすらすらと読み進めている自分を発見してまた驚き。ただ慣れたというだけではなく、実際文章もだいぶ変わっています。
おかげで「能力バトルものラノベ」の皮を被った何か得体の知れないものとしか言い様のなかった1巻に比べ、2巻は普通の能力バトルものにかなり近づきつつある感が。「能力」まわりの細々とした設定なども説明されるようになっていますし。


同様に悪文過ぎて読みながら辛かった本と言えば他の何を差し置いても「リアル鬼ごっこ」を俺は挙げますが、読了直後に本気で外に放り投げたくなったかの作品に比べれば、「樹海人魚(2)」はそんなことはなく。楽しかった……とはとてもいえませんが、何か不思議な酩酊感のようなものがありました。バッドトリップかもしれないけどね。


人にはとてもじゃないが勧められない、というよりこれを同輩に布教すると本気で親交が絶たれそうなので読めとはとても言えません。でも不思議と嫌いにはなれないんだ。
このまま行くと3巻も何のかんのと理屈をつけつつ買ってしまいそうです。


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1巻の感想記事です。