わたし、人力飛行機のパイロットになります! - 「トリガール」
一浪の末、工業大学に入学した女子大生・鳥山ゆきなは、ラブリーでスイートな学生生活を夢見ていたが、ひょんなことから人力飛行機サークルに入部。パイロット班の先輩である高橋圭、坂場大志と人力飛行機のパイロットとして、鳥人間コンテストを目指す。
【トリガール!】『100回泣くこと』中村航の最新作!鳥人間コンテストに情熱をかける学生たちの青春"飛翔"ストーリー!-Walkerplus
そんな中、圭が怪我を負ってしまい、入部一年目のゆきなが急遽、出場することに。
坂場とともに、過酷なトレーニングを積む日々を過ごすが、2人は果たして大会に間に合うのか……!?
鳥人間コンテスト&人力飛行機をフィクションで扱うにあたっては、様々な方向からのアプローチが考えられます。
航空機の製造という高い技術力を要する行為を大人数の集団で協力して行い、完成した機体に乗るは過酷なトレーニングをくぐり抜けた選ばれし1人の(ごくまれに2人の)パイロット。様々な要素が含まれているが故に、焦点をどこにあてるかで作品の方向性も変わってきます。
数十人~百人弱のチームで1機を1年近くかけて設計・製作する過程を追い、プロジェクトものとしての側面に焦点を当てる方法。
鳥人間コンテストという「大会」に出場して他のチームと記録を競い合うスポーツものとしての側面に注目する方法。
「人間が自分の力で空を飛ぶ」部分に目を着けてパイロット個人の視点に寄り添う方法。
ざっと思いつくのはこれくらいでしょう。そして「トリガール」がどれを選んだかと言えば、最後のパイロットに寄り添う方法でした。
大した目的意識もなく工学部に入学してしまった女子大生が人力飛行機のパイロットという打ち込める対象を見つけていく青春ものとしての面に割り切り、他の要素について最小限しか語らないお陰で非常にすっきりとした作品に仕上がっています。一人称視点での物語であることも語る範囲を限定し、主人公との一体感を高めることに寄与しています。
お陰でラスト、鳥人間コンテスト本番での飛行シーンが最高に気持ちいいのです。あれはよかった。
主人公一人称視点でのパイロットとしてのトレーニングの日々の描写に重きを置いているので機体製作の風景はほとんど出てこないものの、所々に差し挟まれる他の部員達の描写には現役&経験者からの取材*1が生きていました。
知らないサークルの先輩でも服装を見れば何を担当しているかすぐわかる(フェアリング班は削ったスチレンまみれで白い、フレーム班はCFRPの破片にまみれて黒い、服が小綺麗なのが電装班)とか、プロペラ班はロマンチストとか、この手の人力飛行機製作サークルあるあるは製作経験者として身に覚えがありすぎて笑ってしまいましたよ。
あまりにもプロットが素直すぎて予定調和な感もありますが、人力飛行機と鳥人間コンテストを題材にした爽やかな青春物語としてコンパクトによくまとまっていました。
関連リンク
本作のための特設サイト。各種インタビューなどやたら充実しており、プロモーションムービーまでありました。
YouTubeにアップロードされている機載カメラで撮影した人力飛行機のフライト動画。これが人力飛行機パイロットの見ている世界なのです。